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美少女化プロジェクト「戦え!ヴァニアリアル・ディズィーズ」

時代は美少女だ。

いや、美少女が時代ではなかった時代は一つもない。いつだって人類は美少女が好きだ。常に美少女の時代でブスは不遇の時代。土偶の時くらいしかフューチャーされていない。いつだってこの世は美少女の時代だ。

しかしながら、この美少女時代、最近ではちょっと様変わりしてきている。その辺を歩いている実在する女性で美しいものを持て囃し美少女と呼ぶよりは、空想上の、二次元の世界に落とし込まれた美少女、いわゆるアニメキャラを指すようになって久しい。徐々に「実在する美しい女性」から「実在しないもの」という意味合いに変わっていったのだ。

美少女が実在しない二次元の存在になると、今度は差別化のため「実在する人物の美少女化」に手を出すようになる。非実在から実在への回帰である。ただし、ここでは完全に実在するものではなく、ほぼ非実在に近い存在、歴史上の人物などになる。

歴史上の人物を美少女化する。この根底には知識の共有というファクターが大きい。例えば、「織田信長」を美少女化しても、多くの人の頭の中に織田信長というキャラクターはいる。どんな性格でどんな立ち位置でどんな行動をとりそうなのか、程度の差はあれど予想しやすい。それをそのまま美少女に落とし込むことで最も苦労する「キャラ設定」という部分をある程度パスできる。さらには受け手側も「織田信長」が出てくればさすがに主役級かそれに準じる重要キャラと認識しやすく、こいつと敵対関係にあるとかキャラの相互関係を理解しやすく、説明の手間が省ける。

美少女化はさらにマニアック化の一途をたどり、艦艇を美少女キャラクターに擬人化した「艦隊コレクション-艦これ-」や、これは擬人化ではないが美少女と戦車を組み合わせたガールズ&パンツァーなど、どんどんマニアックな世界へと飛び込んでいっている。最近では歴代総理大臣を美少女化したゲームが登場するなど、もう何がしたいんだか分からない状態になってたりする。

思うに、美少女と対極にあるような、無骨なものやマニアックなもの、絶対にこれと美少女は接点無いだろうってものを美少女化する段階にきていると思うんですよ。そういった決して交わらない物を交わらせて化学反応を期待する。そうなってると思うんです。

そこで、考えました。絶対にこれは美少女化しないだろうってものを考え、全11話のアニメに仕立てあげましたので、ダイジェストで申し訳ないですがご覧下さい。

「戦え!ヴァニアリアル・ディズィーズ」

第一話 わたしクラミ!

「いっけなーい、遅刻遅刻!」

朝から全力疾走をしている私、クラミ!なんでこんなに急いでいるかっていうと、学校に遅刻しそうなの。校則が厳しいヒニョーキ学園に合格して、親戚中が奇跡だって大騒ぎしたんだけど、まさか入学式から遅刻するなんてええええ。

「お、クラミちゃん!朝から元気だね!今日から高校生かい!大きくなったねー」

「あ、おじさんごめんね、今日は急いでるから!」

「おう、放課後でいいよ、待ってるよ」

私のおばあちゃんがいつも言っていた言葉、なんでも私の笑顔は多くの人に感染するらしい。人から人へ笑顔を伝えていく、そうしていつのまにか大きな幸せにする、そんな不思議な力があるらしい。もちろん、そんなのは迷信で、いつも笑顔でいなさいっていうおばあちゃんからの教えなんだと思う。

でもね、こうやって街の人が笑顔で私に接してくれてるのを見ると、ばあちゃんの言葉も迷信じゃないのかおしれないって思うの。うん、私はこの街が好き。いっけなーい、でも今はそんなこと言ってる場合じゃない。とにかく急がないと!

ドンッ!

「いてててててて!ちょっとー!きをつけてよね!」

「あら、よそ見をしていたのはそちらじゃなくって?」

むむむー、なんて高飛車でむかつく女!確かにすっごい美人でスタイルも良くてモデルみたいだけど、そんな言い方はないんじゃない。

「あ、同じ制服!」

「あら、あなたもヒニョーキ学園に?ずいぶんとレベルが落ちたものね」

な、な、な、な、なによーーー!

(チャイムの音)

「でねー、その女がすごいムカつくのよ!「ずいぶんとレベルが落ちたものね、オホホ」とか高飛車に言うわけ!」

「まあまあ、クラミちゃん、ギリギリ入学式には間に合ったんだし、こうして高校でも同じクラスになれたんだし」

この子はケジラ、私の幼馴染だ。いつものんびり、ほんわかしていてノロマなんだけど、おっぱいだけは大きい。怖くてカップは聞けないけどとにかく大きいらしい。いつも私の後についてきて、私がいないと何もできない子だ。別なクラスになったら心配だなって思ってたけど、どうやら同じクラスみたいでホッと胸をなでおろした。

「あら、またまた奇遇ね」

「あーーーー!朝のむかつく女!」

「え、この人が?ほんとだ、すごい美人。えっと、ここにいるってことはあなたも同じクラス?」

「そうよ。クラスメイトなら自己紹介しないわけにはいかないわね。私はリン。よろしくね」

「はい!わたしケジラって言います。お友達になってね」

「そうね、考えておくわ」

「ちょっとちょっと、なに勝手に仲良くなってるのよー!わたしはね、ぜんっぜん仲良くする気なんてないんですから」

「そう、残念ね」

「まあまあ。仲良くしよう、クラミちゃん、リンちゃん」

「むううううう」

「ふんっ」

こうして入学早々、いけすかない女と友達になってしまった。本当についてないんだけども、まだまだこんなものじゃないって、この時の私は知る由もなかった。


キーンコーンカーンコーン!

「よーし全員整列したらグラウンドを4周!」

「うえええええ、入学式から授業が始まるってだけでもげんなりなのに、いきなり体育だなんてー」

「あら、ヒニョーキ学園は名門進学校、受験のためには一日だって無駄にはできないのよ。これくらい当たり前よ」

「ぐううううう、受験と体育になんの関係がああ」

「あら、厳しい受験戦争を勝ち抜くには体力からって存じないのかしら」

張り合って走るクラミとリン、その後ろをケジラがボテボテと走っている。

「まってくださいー、ふたりともー!」

その時、クラミの頭の中に声が響いた。

「危険が迫ってる!」

立ち止まり周囲を見回すクラミ。

「気のせい?」

「どうしたの?」

「なんだか声がしたの。危ないって」

リンも立ち止まりクラミに駆け寄る。

「ちょっと休んだほうがいいんじゃない?」

「危険が迫ってます。今すぐ戦う準備を!」

また大きく頭に響いた。大きく仰け反るクラミ。

「ちょ、ちょっとー先生、クラミさんの様子が」

その時、リンが気がついた。まわりの女生徒が全員倒れている。それでもなお、角刈りの体育教師は竹刀を振り回している。

「ぐへへへへへ走れ、走るんだ!死ぬまでなああああああ!ゲハハハハ!」

完全に正気を失っている。

「貴様もはしれーーー!」

「きゃあ!」

体育教師は尋常じゃない動きでケジラに襲いかかった。

「ちょっとケジラさんに何を、きゃあ!」

跳ね飛ばされるリン。相変わらずクラミは倒れている。暴走した体育教師の魔の

手がケジラに襲いかかる。

「はわわわわわ」

(CM)

「はわわわわわ」

「ぐえっへっへっへ」

その時、気を失っているクラミの頭の中で会話が聞こえていた。

「・・・・・・・た・・・・なさい・・・」

「たた・・・・い・・・・なさい・・・」

「たたかい・・・なさい・・・」

「だれ?おばあちゃん?」

「ちがうよ、そうだね、敢えて言うならジスロって呼んでくれ」

「ジスロ?」

「そう、ニックネームだけどね」

「そのジスロが私に何の用事?」

「そうだね、単刀直入にいうと君は選ばれたんだ」

「選ばれた?」

「そう、選ばれた。君は戦う運命に選ばれたんだ」

「戦う・・・?私が・・・?」

「そう、きたるべき日に備えてね」

「来るべき日?」

「いまは言えないけど、きっとわかる日が来る。目の前の危機もその影響だ。ああやって心の弱い人間が蝕まれていく。さあ、君のチカラで倒すんだ」

「私のチカラ・・・?」

「もうわかってるはず、キミが祖母から受け継いだチカラ。ずっと守ってきたチカラ。さあ行こう!」

「まって!ジスロ!」

「時間だ」

目が覚めると、完全に凶暴化した体育教師が今まさにケジラに襲いかかろうとしていた。

「まちなさい!」

「なんだ貴様は!?」

「汚い手でその子に触らないで!」

クラミの頭の中にジスロの声がリフレインする。「もうわかってるはず、キミが祖母から受け継いだチカラ。ずっと守ってきたチカラ」

「ヴァニアリアル・ディズィーズパワー!S!T!D!」

クラミがそう叫ぶと光の柱がその体を包んだ。そして瞬く間に赤を基調とした流線型の戦闘服へと変身していく。

「ヴァニアリアル戦士!クラミジア!」

リンとケジラはいつの間にか気を失っている。

「ふん、ヴァニアリアル戦士だと?あのお方には遠く及ばんわ!」

体育教師の突進がクラミジアを襲う。

「わ、わ、わ、ちょっとちょっとー!」

避けることしかできないクラミジア

「フンガー!」

「戦うってどうすりゃいいのよー!」

また頭の中に声が響いた。

「キミがおばあちゃんから受け継いだ力だ」

「だからなんなのよー、それ、私は笑顔を感染させるとしか聞いてないよー」

「それだ!君の感染力は一級品だ。それも笑顔だけじゃなく、もっと別なものが感染するはずだ!」

「別なもの!?」

「そう!わかったね?」

体育教師から距離をとり向き直るクラミジア。体育教師の呼吸は荒い。

「フヘヘー!ピンサロー!ピンサロ!」

性風俗に溺れし悲しき存在よ。天へと帰れ!」

スラスラとセリフが出てくる。

「喰らいなさい!クラミジアKANSENSYO-!」

ピンク色の光が体育教師に襲いかかる。

「ぐあああああああ、尿道が、尿道がああああ、かゆいいいいいい」

そのまま弾けるように消えた。

「あれ?ここは?」

次々と周りの生徒が起き上がってくる。リンとケジラも起き上がった。

「みんな熱中症で倒れたみたい。先生もどこかにいっちゃった」

「さすがヒニョーキ学園ね、体育だけでここまでハードだとは」

私はクラミ。ヴァニアリアル戦クラミジアとして「悲しき存在」と戦うことになったんだ。笑顔と痒さを伝染させるのが武器。でも、伝染させるのはそれだけえじゃなかったんだ。

つづく

ここからはダイジェストになります。

第二話 ケジラはわたしがいないと何もできない子

クラミとケジラの幼少期の思い出話で盛り上がっているところに、リンがやってきます。ふたりの思い出の品はケジラのお父さんのT字カミソリ。こっそり持ち出して遊んでいたら、ケジラが腕を切ってしまって血が止まらなくなります。

「それは傑作ね」

「それからずっと二人の宝物だって言ってT字カミソリ持ってんだよ、この子。まさか今でも持ってたりして」

リンとクラミの二人でケジラのことを笑っているとケジラが拗ねてしまいます。

「持ってないもん!」

二人を離れて行動するケジラですが、クラミがいないとあらゆることが上手くいきません。食堂で転び、ノートを噴水に落とし、先生にぶつかって大量の書類を撒き散らしたりしてしまいます。

そして、ついに理科実験で爆発を起こしていしまい、居残りを命じられます。誰もいなくなり、ケジラだけとなっった理科実験準備室に荒い呼吸が響き渡ります。そう、「悲しき存在」です。

理科教師がデリヘルにはまった「悲しき存在」となり、ケジラに襲い掛かります。「あのお方への手土産にちょうどいいわい」襲いかかった時、ケジラが覚醒します。

「ヴァニアリアル・ディズィーズパワー!S!T!D!」

眩い光がケジラを包み込みます。

「ヴァニアリアル戦士、ケジラミ!」

「悲しき存在」は覚醒したケジラミのチカラでなんとか倒しますが、そこにクラミが駆けつけ、涙ながらに謝ります。

「ケジラ、全部ジスロから聞いたよ。ごめんね。ケジラがこうなったのも私のせいなの。私のチカラで戦う宿命がケジラに感染したみたいなの。本当にごめん」

それを見てケジラが言います。

「いいの。わたし一人で戦えた。クラミちゃんは私の大切な友達だから、クラミちゃんから感染するものならなんだって嬉しい」

「ケジラ……」

変身の解けたケジラの懐から錆び付いたT字カミソリが落ちてくる。

「まだ、もってたんだ……」

「大切な思い出だもん。私と、クラミちゃんの。ずっとクラミちゃんが止血してくれた大切な思い出だもん。捨てられないよ」

「ケジラ……もう……!」

理科準備室に差し込む夕日がT字カミソリの長い影を作り出していた。ゆらゆらと揺れ動くその影は、次なる「悲しき存在」の到来を予言していた。

第三話 クールビューティー、リン!

クラミの力はリンにも感染しており、行きつけのパン屋でイメクラにはまり「悲しき存在」となったパン屋の主人に襲われそうになったリンは覚醒し、「ヴァニアリアル戦士淋病として勝利する。「悲しき存在」が口にする「あのお方」とは一体何者なのか、謎は深まっていく。

第四話 ジスロ登場

いままでクラミの脳内に語りかけるだけだったジスロがついに実体化する。ジスロは青い模様の猫だった。猫嫌いのリンの青い顔と対照的に猫が大好きなケジラはジスロを可愛がる。

そこに出会い系サイトにはまりし巨大な「悲しき存在」が襲来する。一人一人の技では全く歯が立たないが、「それぞれの症状が重なった時が一番強烈」というジスロの助言により、三位一体必殺技「混合感染(ミックスインフェクション)」により悲しき存在を打ち倒す。

第五話 プラム来日

前回以上の強力な「悲しき存在」が襲ってきたら歯が立たないという心配から、クラミの提案により合宿が行われる。合宿先の民宿で働く女将さんと仲良くなり、女将さんの娘がドイツから帰国してくるというので皆で迎えに行く。

「プラム、本名はプラム=ポイズンよ」

と高飛車な感じ。まるで最初の頃のリンちゃんみたいでいけすかない感じと評判が悪い。そこに飛行機を墜落させる「悲しき存在」が現れる。あまりの強大な力に三人は苦戦し、諦めかけたその時、プラムが変身し、ヴァニアリアル戦士梅毒となって一瞬で「悲しき存在」を焼き払う。

なぜ、クラミから感染したわけでもないのに、どうしてその力が?困惑する一同、けれども強力な仲間ができたことに喜ぶクラミたち。そこにプラムの言葉。

「あなたたちと一緒に戦う気はないわ、くだらない」

カツカツとハイヒールの音を響かせて空港をあとにするプラムの背中を見ることしかできなかった。

第六話 悪夢と少女の涙

悪夢にうなされるプラム。黒い影に苦しめられる。「あのお方」への忠誠を誓うシーンがフラッシュバックする。目覚めたプラムは汗ビッショリだった。

クラミたちの学校に転入することになったプラムだったが、やはり心を開かない。クラミたちが仲良くしようとあの手この手で迫るが、プラムは相手にしない。それどころか遠巻きにクラミ、ケジラ、リン、ジスロたちを監視している。

そこに襲ってきた「悲しき存在」をクラミたちは倒すも、すべてのデーターをプラムによって計測されていた。不穏な影が学園を包み込む。

第七話 青い海!

水着回。

みんなで海に行くサービス回。

第八話 バイオハザード

その日は朝から曇天だった。厚くて暗い雲が学園を覆っていた。1つの黒い影がその中から現れる。その名も「もう一つの絶望」、全ての元凶である「あのお方」と対をなす絶対的な悪だ。

「もう一つの絶望」は絶望を感染させる特技を持ち、次々に学園の生徒や教師を「悲しき存在」へと変えていく。瞬く間に学園は地獄絵図と化した。悲しき存在は悲しき集団となり、「悪意」に形を変える。

クラミ、ケジラ、リンは必死に抵抗するが、波のように押し寄せる悪意に歯が立たない。

「くそっ!こんなのどうしようもない」

絶望はリンにも感染し始めていた。

「あああ、全てが終わる……」

ケジラが涙を流す。

「どうして。どうしてこんな絶望が存在するの。どうして」

クラミは膝から崩れ落ちた。

巨大な悪意は瓦礫を巻き込み竜巻のように成長していく。もう、クラミたちの変身は解けてしまっている。

その様子を屋上から眺めていたプラム。

「ええ、順調です。はい。ありがとうございます。私のデータが役に立ったようでなによりです。はい、それでは」

通信機でどこかと連絡を取るプラム。脳裏に様々な思いが駆け巡る。必死に話しかけてくれたクラミ。天然ボケに見えて気遣ってくれていたケジラ。いつまで気をはていたって疲れるだけ、バカふたりをみてたらどうでもよくなっちゃうよ、そんなの、とアドバイスをくれたリン。クラミの笑顔が山ほど思い出される。

「笑顔を感染させるのが特技なんだ」

クラミのセリフがフラッシュバックする。

「ほんと、バカなやつら」



巨大な悪意の竜巻がクラミたちに襲いかかる。

「あぶない!逃げるんだ!」

ジスロが叫ぶ。

「ここで私たちが逃げたら、今度は街がめちゃめちゃにされちゃう。わたしの大好きな街、笑顔の街が」

「はやくにげるんだ!」

一筋の光が見えた。

「まったく、ほんとにバカな人たち」

「プラムちゃん!」

「今回だけよ!」

「ヴァニアリアル・ディズィーズパワー!S!T!D!」

紫色の光に包まれるプラム。

「ヴァニアリアル戦士、梅毒見参!グーテンターッグ!」

つづく

第九話 悲しき存在、プラム

生まれた時から、母親から聞かされていた言葉は「忠誠」だった。「あのお方」への忠誠。ただそれだけが正義だと信じ込まされていた。逃げるように留学したドイツでも同じことだった。母親によって周囲の人間は洗脳されており、ただ、幼い頃の洗脳を確認する作業だけが延々と続いていた。

姿すら見たことがない「あのお方」への忠誠。それだけが生きる意味だった。そんな私の絶望は、だれに力を借りることなく覚醒へと導いてくれた。そう、ヴァニアリアル戦士として覚醒。ただ、それは悲しきを存在と戦う宿命ではなく、「あのお方」をお守りする宿命として。

悪意の竜巻に舞い上げられたプラムは落下しながら今までのことを考えていた。自分はどこにあったのだろうか。自分は誰のために生きてたのだろうか。はたして、自分は絶望する権利があるのだろうか。自分すらない人間、絶望する権利すらない。そう、絶望とは必死で生き抜いた人間が持つ権利なのかもしれない。このまま絶望も何もせず、ただ死ぬのも悪くない。当然の結果だと思い始めていた。

「プラムちゃん!」

風が、止んだ。

目を開けると、プラムの目の前にはクラミ、ケジラ、リンが覆いかぶさるように立っていた。

「どうして?」

「どうしてって?仲間じゃん。私たちヴァニアリアル戦士だよ。なじ性病仲間」

「わたし、わたし……」

それ以上言葉が出なかった。

「さあ、いこう!」

四人が立ちがる。

ジスロが叫んだ。

「四人が混合感染することで強力な波動をだすことができる!きっとこの「もうひとつの絶望」だって倒すことができる!」

「くらえ!ヴァニアリアルTEOKUREスパーク!」

もうひとつの絶望は音もなく消え去った。晴天が学園を包む。

「プラムちゃん!」

ボロボロになったプラムに駆け寄る。

「プラムちゃんしっかりして!」

「わたしもうダメみたい。でもよかった。わたし一生懸命戦った。ごめんね、最初はみんなのデーターを敵に渡してたの。ごめんね。でもよかった。私一生懸命戦ったから絶望できる。こんな私が絶望できるなんて思ってもみなかった」

「もう喋るな!はやく救急車を」

リンが叫ぶ。

「最後に言わせて。私はかつて「あのお方」に忠誠を誓っていた。「あのお方」の力はあまりに協力。ただ純粋な悪意。でもその姿は見たことがない。でも、ヒントだけはずっと聞かされていた。もうすぐやってくる。私の最後の力で。お母さんからもらった力で」

プラムの首にかけられた小さな水晶が光りだした。

「これで少しは「あのお方」、ただ純粋な悪意を苦しめることができる。私の命をかけて」

水晶がいっそう強く光った。

「クラミ、あんたの特技は笑顔の感染だったね。最初はバカみたいって思ったけど、けっこうすごいね」

一度も笑わなかったプラムが静かに笑った。そして握られた手から一気に力が抜けた。

「プラムちゃーーーん!」


第十話 ただ純粋な悪意

「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

「あの女、裏切りやがって!」

「許さん、許さんぞ」

低く重い声が響き渡った。プラムの亡骸は消え、水晶だけが輝きながら宙を舞った。

「この声は、「ただ純粋な悪意」か!?」

リンが叫ぶ。

「どこ!?」

クラミが叫ぶ。

校庭の砂が舞い上がった。

「ばれてしまっちゃしょうがあるめえ、ここだよ、ここだ」

俯いているケジラから声が聞こえる。

「ま、まさかケジラが!?」

「そ、そんな…」

ただ純粋な悪意が姿を表した。

「つかれたぜー、ケジラミなんてチンケな性病に化けるのはよ。俺こそが「ただ純粋な悪意」性病の持つ絶望や悪意が具現化した存在だ」

「私たちを騙してたのね」

「ああ、そうだ。クラミジア、お前の存在がずっと驚異だったからな。ケジラミに身を隠してずっと傍で監視していたのさ」

巨大な黒い塊が町を襲う。

「こんなチンケな街、一瞬で絶望に変えることができるぞ」

「ああああ」

リンが絶望する。その横でクラミは笑っていた。

「私、プラムちゃんから伝染させられたものがある。それは希望。希望って伝染するんだよ。笑顔も希望も感染する。安心して、リンちゃん」

巨大な悪意に立ち向かうクラミの姿があった。

最終話 笑顔の感染

「クラミ、お前何を……?」

「ジスロ、お願い!」

クラミが叫ぶ。

「薄々気づいてると思うけど、いいのかい?」

「いいの?」

「僕の力を借りるということは……」

「はやくやって!ジスロマック!」

「わ、わかった!」

ジスロとクラミを巨大な光が包む。クラミの足元から花が咲き乱れる。

「これは……」

「究極魔法、TOUYAKUCHIRYO、伝説の極限魔法!」

地面が割れ、いたるところから光が噴出する。

「そんなあああああまさかああああああああああああああ」

静けさが戻った。

上空を見上げるリン。ゆっくりとクラミとジスロが降りてきた。

「大丈夫か!クラミ」

「大丈夫だよ、リンちゃん。ふふ、その顔、初めて会ったときみたい」

ゆっくりとクラミの体か消えていく。

「な、どうして」

「ジスロ、正式名称はジスロック。クラミジアの治療薬だよ。その力を借りたんだから、私は消えなきゃ」

「そんな、なんで」

「いいの。私はプラムちゃんに希望を感染させられた。今度は、リンちゃんに感染させる番」

「バカ、バカ!」

「しってる?私の特技は感染力なんだよ。笑顔も希望も友情も感染させる。さようならリンちゃん。私がいなくなってもこの街を、学園をよろしくね」

「消えるな、消えるなー!」

クラミとジスロの姿が消える。

夕日がさす校庭にはリンだけが残されていた。

「ばかやろう。ばかやろう…」

リンの泣き顔はすぐに終わり、勇ましい顔に変わる。

「この街は私が守る」

クラミもジスロも消えた。プラムも消えた。そしてケジラは元凶で、そのまま消えた。残されたのはリンだけだった。

「ばかやろ、淋しいだろ」

リンだけが校庭に佇んでいた。眩しいくらいの夕日をバックに。

おわり