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37番の男

僕はいま深い怒りに身を沈めていて、非常に憤っていたりするのだが、そもそも僕は結構短気で怒りっぽい性格なのだけど、そんな自分が嫌でしょうがないので務めて怒らないようにしていたりして、例えば、人と待ち合わせるときに、ギリギリ待ち合わせ時間に到着するように行動すると、間に合うだろうかと不安になり、イライラし、些細なことで怒って、改札で引っかかるババアやスリップストリームの前の車みたいな状態で僕の前をゆっくり歩くオッサンなどにイライラしてしまい、そんな些細なことで怒り狂う自分のことを心底嫌いになり、おまけにここまでイライラしながらも待ち合わせに行ったのに相手が遅れてきたりなんかした日にゃ、数分の遅れでも許容できないような心狭さを発揮し、自己嫌悪に陥ったり、少しのズレも許せないセコイ人間になっちまったと心の中で号泣したり、はたまた中学時代にクラスのみんなで買い物に行くって駅で待っていたら僕だけ中止の連絡がきてなくて、駅にはでかい荷物もった外人しかいなくて、なんか怖いから早売りのジャンプ買って帰った悲しい記憶が蘇ったりして精神衛生上あまりよくなくて、だからそういうことにならないよう、僕は待ち合わせの2時間前に到着すように行動してて、そうすることで移動にも心の余裕を持って対処できるし、どうせもう2時間待ってるのわけで、相手が数分遅れたところで誤差の範囲ということで許容できたりするわけで、全てにおいてこういった気配りをして短気な自分を怒らせないように怒らせないように努力に努めているのだけれども、まれにどうしようもない突発的事象が起こってしまい、激しい烈火のような怒りに身を沈めることが起こり得てしまうわけで、それが人生の面白さとも思える時があるのだけれでも、やはりなるべく怒りたくないと思ったりもするわけで、怒ってしまうとどうしてもその場に立ち止まっているような印象を受けてしまい、やりきれない思いがあるわけで、僕らは前進していかなければならず、怒りは現状にとどまっているに過ぎず、その滞留を消化するためにあえてここに書かせてもらおうかと思いますので、どうかご理解いただきたいと思うわけなのですが、どうでしょうか、大丈夫ですか、そうですか、では書こうと思うので、どうぞしっかり読んで、そして忌憚のない意見をお聞かせ願いたいわけで、この間、箱根の日帰り温泉っていうんですか、入浴料だけ払って温泉に入る施設に行ったんですけど、まあ、普通の銭湯みたいなもんですわな、そんなもんですよ、で、受付で入浴券買って、確か1000円以上はしたと思うけど、まあ最近では健康ランドみたいな場所ももっと高かったりするし、妥当だとは思うけど、もう少し安くてもいいかなって思いつつ、受付のエアロスミスを醤油に漬けたみたいなオッサンから36番の番号札と鍵をもらっていざ脱衣所へと行ったわけで、そうすると、けっこう手狭まな脱衣所に工夫して沢山のロッカーが置いてあるわけで、ざっと数えてみたら200番くらいまでのロッカーがあったので、スペースの有効利用としては申し分ないわけで、おまけに平日の夕刻ということもあってガラガラに空いてて思いっきり快適、かつ清掃もきれいに行き届いていて言うことなしってな状態で、ルンルン気分でまずは体重計に乗ってみたらデブすぎて測定不能よ、どうなってんだこれ、4トンくらい測れるやつ置いとけよって思うけど、まあ、これはデブが悪いって納得しますよ、納得するね、でも、ここからがどうしようもなくて、颯爽ともらった36番のロッカー行くとさ、一番下の段なわけよ、いやいやいやいやいや、すげえやりにくいじゃないって思うでしょ、やりにくいでしょ、混んでるならまだ納得もするけど、くっそガラガラなわけだし、体重測れない巨漢がきてんだから、そこは一番上とか渡そうよって思うんだけど、まあ仕方なしに服脱いでかがんで突っ込んでって繰り返していたら、僕の真横にもう一匹デブが佇んでやがって、なんだこのデブ、おいおいすげえデブだな、何食ったらそんなデブになるんだって思いつつ、こいつはなんで僕の真横にいるのか、なんで僕の裸を凝視しているのか、ホモか、ホモなのか、ここはもしかしてハッテン場というやつか、くわばらくわばらとか思ってると、デブの手には37番の番号札があるわけで、おいおいおいおいおいおいおいおいおいおい、あのな、ここクッソ空いてるじゃねえかと、むちゃくちゃガラガラじゃねえかと、そいで200番くらいまでロッカーあるじゃねえかと、俺36番、デブ37番、なんで連番を渡すんだと、誰しもがそう思うわけで、普通に100番台とか200番台渡せば文句もない、離れた場所でデブが二人服を脱いでいるだけなのに、なんで36番渡したあとに37番渡すかな、ほら、デブの人、俺服脱げないじゃんって顔して待ってるじゃん、しかしすげえデブだな、っておいおい、無理やり割って入ってくるのかよおかしいだろ、おかしすぎるだろ、おかしい、連番で渡すのはあの受付の死にかけのジジイのミスだ、君に瑕疵はないだろう、って言いたいけど、普通、そこはこっちが脱ぎ終わるまで待つだろ、譲り合いの精神だろ、ちょっとまてよ、何脱いでムリムリと接近してきてんだよ、おい、やめろって、ロッカーの中に食い物はねえよ、あせんなって、しかもなんで37番が36番の一個上なんだよ、普通は上から番号が増えていって、36は一番下なんでその次の37番は隣の列だろうに、なんでこのロッカー番号が減っていくスタイルなの、なんでこのデブのロッカーが俺の上なの、おい、裸で近づいてくるな、おい、待てよ、あれか、これはあれか、デブ同士で上下のロッカー使わせたらお互いに肉がまじりあい絡み合い、最終的には一つの肉塊になるみたいな実験か、そうか、そうなのか、ってかこのガランとした脱衣所の一角でデブ二人が密着してるの異常で、もしかしたらどこかに隠しカメラが仕掛けられてて、そういうのが性癖な人のために売りに出されたりするのかもしれないと思いつつ、それは嫌だなって感じだけどもし売るなら「脱衣所デブ二人~肉塊温泉~」ってタイトルがいいなって、おい、チンコ近づけるな、やめろ、あのね、僕かがんでる状態でロッカーに腕時計とか入れてて、その上のロッカーでデブも同じことしてて、餅つきみたいな息の合った状態になってんだけど、デブがチンポ丸出しって暴挙に出るとなんか怪しい位置関係で顔の前にデブのバイエルンがあるわけよ、ってね、さすがに僕も怒りますよ、ええ、怒りますよ、おりゃあね、温泉に入りに来たわけで、ライブビューイングでデブのチンポ見に来たわけじゃないんで、こりゃあ文句の一つも言ってやろうと怒りましてね、ええ、短気なんだけど自らの感情をコントロールして怒らないように努めているこの僕でも怒りましたよ、怒ります、このまま受付まで怒鳴り込んでやろうかと思ったんですけど、ふと、本当に受付の親父が悪いのだろうかって思考が生まれてきて、いくら受付のエアロスミスの醤油漬けのオッサンでもそれなりにこの温泉の受付としての経験があると思うわけで、さすがにこんな宝くじじゃないんだから連番で渡すような狂気の沙汰を演じていたらそれなりにクレームが入っていると思うわけで、そういうことをナチュラルに実行するとは思えないわけで、これはもう、「指定があった」と考えるのが至極真っ当、つまり、デブの隣に行かせてくれと命令されていたわけ、じゃあ誰が、そうれもうこのデブしかいないでしょう、貴様が黒幕かーってなるのも自然の流れ、たぶん受付のエアロスミスは娘を人質に取られていて脅されていたんちゃうかな、で、俺好みのデブが来たら36番を渡し、俺に37番を渡せみたいに言っていたんだと思うわけよ、よく考えたらこの位置、他のロッカーから見えづらい絶妙の位置なわけ、で、オッサンは長年受付をしてきた誇りとプライドがあって客を売るような真似はできないんだけど、デブの手に落ちた愛娘のために断腸の思いで36番を僕に、許してほしい、許してほしい、今頃泣いているに違いない、大丈夫だオッサン、娘は俺がなんとかしてやる、ってこのデブ、全部服を脱いだのに携帯電話を取り出したりまたしまったりしてロッカーから離れようとしない、こうやってみると悪そうな顔しとるわ、エアロスミスオッサンの娘、便宜上、リヴタイラーと呼ぶけど、リヴを監禁してカロリーの高いものにさらにマヨネーズをかけて食わせる拷問をしているに違いないって考えていたら、38番の札を持ったデブがさらにやってきて、なんなんだよこれ、第三のデブってなんなんだよって途方に暮れてて、38番のデブはさらに上の段に服を入れ始めてまるでデブが折り重なるようにデブのトーテムポールみたいになってて、そうそうトーテムポールって北アメリカ大陸の太平洋に面した北西沿岸部に住む先住民が主に立てていたんですけど、あの彫ってある彫刻の中には彼ら先住民が有している伝説や物語が記載されていることもあるんですよね、つまりデブ三人の物語が彫られたトーテムポールがこの脱衣所に誕生したともいえるかもしれず、なんでしょうか、各々が家を建てる物語でしょうか、オオカミから身を守るために38番のデブが藁の家を、37番のデブが木の家を、そして僕がレンガの家をってそんなこと言ってる場合じゃねえ、明らかにこれはおかしい、絶対におかしい、何らかの意図が働いているのは確定、この脱衣所内で、いいや、この箱根で、いいや、この日本において、現在春場所が行われている大阪城ホールの次にデブ密度の高い場所がここなわけだよ、って明らかにデブ二人で僕の品評会してるでしょ、これ、なんなの、どっちかに抱かれるわけなの、どうせなら38番の方が肌ももちもちしてるし、パイズリとかできそうだし、気遣ってくれそうで、反面37番は身勝手な感じで自分さえ気持ち良ければそれでいいって感じであまり好みではないかなあってそういう問題じゃないわけよ、なんでこんな1平方メートルくらいの場所にデブのバイエルンが3本あるのかって話で、これはもう、娘が脅されているとしても解せないっていうわけで、受付の親父に文句言ってやろうと思いましてね、そのまま脱衣所を出ようとドアのところまで行ったんですけど、僕全裸だった、こんなもんぶら下げて出ていったら逮捕されるってんで、またロッカーに戻って服を着ようとしたら、37デブは全裸で携帯いじってるし、38デブはお前何枚重ね着してるんだよってレベルで服脱いでるし、そのデブの森の中をかいくぐってフェラチオみたいになりながら服を着て、いざ受付へ、そこでものすごい文句を言ってやろうと思ったんですけど、僕は結構気が弱いので、それとなくやんわりと「すごいロッカー空いてるのになんか集中してませんか」って聞いてみたら、受付のオッサン、「実は35番周辺のロッカーだけ少しサイズが大きいのが使われていて、体の大きいお客様はそちらに案内をさせていただいてます」ってなんか一瞬納得したけど、別にデブだからってでかいロッカーが必要なわけじゃないぞ、別に甲冑着てるわけじゃないから、服なんて畳んでしまえばそんなに大きさは変わらない、まあ、肉という甲冑は着てるがそれは脱げないしな、ガハハハハハって笑ってる場合じゃないわな、たぶんだけど、このエアロスミスなオッサンも以前に太った客からクレームをつけられたんじゃないかな、ロッカーが狭すぎるとか、変な箇所に対してイライラする人っているからね、で、またクレームつけられてはかなわんと、デブを大きいロッカーに案内するようになったわけで、たぶん受付のオッサンも本当は短気なんだろうね、そんな顔してるし、でアホみたいなクレームつけられてイライラする自分が嫌で、そういうことにならないようにしてるんだろうって思う、みんな自分が短気で怒りっぽくてイライラするところが嫌いで、そうならないように生きている、やはるい僕もそうならないように努めて穏やかに過ごさなければならない、36番のデブはそう思ったわけで、その後、風呂に入って怒りを鎮め、温まり、悠然と脱衣所へと行くと、37デブと38デブも同時に上がってきて体拭いてて、なんだよイライラすんなずらせよって思いつつ、いけない、いけない、穏やかに穏やかにって二人のデブが服を着るのを見ていたら、37デブのTシャツが観光地とかによく売ってる、寒いギャグが書いてあるTシャツで背中には「デブですが何か?」って強烈な自虐ギャグがプリントされていて、前の方にには「ここのメニュー、〇がないんですか?」って書いてあって、なんだよ、その〇がないって、なんでそこを伏字にする必要があるんだ、そんなもん誰が見ても大盛りか特盛かおかわりに決まってんだろ、舐めんな、俺たちデブだぞ、ってすげえイライラした。〇がないんですか?ってすげえイライラするからやめてほしい