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ポイント2倍デーは他の日がポイント半分で損ということだ

近所のドラッグストアで買い物をした。決して誤解しないで欲しいのだけど、別に痔が悪化したからポラギノール的なものを購入したわけではない。大人の男の必需品的な、ウルオス?みたいな肌のケアっぽいものを購入した。決してポラギノール注入軟膏ではない。

ドラッグストアには勇ましいノボリが多数立てられていて、さながら戦国時代の風林火山と言わんばかりの勢いを感じさせてくれていた。

「本日は特売デー!」

「超お買い得!」

勇ましい売り文句が勇ましいフォントで書かれていた。すごく活気がある。その中でも最も目立つ位置に置かれたノボリが目に留まった。特に店側が推したい売り文句が書かれているに違いない、そう思い眺めてみると勇ましくこう書いてあった。

「本日はポイント2倍デー!!!」

この店は独自のポイントシステムを採用しており、100円買い物すると1ポイント付与される。そのポイントはこの店と系列店で1ポイント1円として使用できる。それが今日は2倍になる。つまり100円で2ポイントつくというのだ。

今僕が買おうとしている商品が2gが30本入っていて3500円程度、つまり普段は35ポイントだが今日は70ポイントもつくらしい。これはなかなか大きい。

こういったポイント倍増システムに煽られ、じゃあ今日はどうせいつかは使うものをまとめて買っておきましょう!みたいになる人は多い。現に、この店内でもトイレットペーパーやら何やらをまとめ買いしている人が目立つ。完全に購買意欲を煽るのに成功している。

けれども、僕はこういった「ポイント2倍!」といった文言に対して逆に萎えてしまうのである。なんだか損をしたような気分になってしまうのだ。

まず前提として、こういったポイントシステムを採用している店は、赤字になるほどポイントを付与しない。もちろん、与えたポイントは必ず店で使われるという前提があり、いつかは売り上げになるわけだから現金値引きよりも大胆に与えることはできるだろうが、基本的に赤字になるようにはしない。それは商売の原則だ。

つまり、こうやって「ポイント2倍!」とやるということは、本当は普段から2倍あげてしまっても赤字にはならないということだ。じゃあ普段は何なのか、これはもう普段は不当にポイントが半分になっていると考えることができるのではないか。

つまり、ポイント2倍デー!お得だ!ではなく、ポイント2倍デー!それだけあげても大丈夫なのに普段は半分にしやがって、と萎えてしまうのである。しかもこの店は、たまに狂気の沙汰としか思えない、「ポイント5倍デー」までやるので、「2倍デー」であってもそこまでお得でない可能性が高い。

黄色いパッケージの箱を袋に詰めながら、僕は恨めしくそのノボリを見つめていた。何事も言い方で大きく錯覚させられるのである。

僕の職場に、二人のイケメン的扱いを受けている男性がいた。一人はエグザイルのサングラスの破片から生まれてきたみたいな男で、まあ、エグザイルに憧れているんだろうな、という感じの男で、もう一人がFAXで送られてきた海老蔵みたいな男だ。

この二人が、ある美人社員を狙っていて、お互いに争うように彼女にアプローチしていた。この女も結構悪い女で、そうやってエグザイルと海老蔵を競わせていることを楽しんでいる節がある。基本的に僕は部署が違うのでこれらの争いを目にすることはあまりないが、たまに用事があっていくと、エグザイルと海老蔵が「今日は仕事終わったらどう?」「うちのプードルみにこない」とか甘い言葉で囁いているのでこっちが赤面してしまうくらいだ。もう「アモーレ」とかそういう言葉がポンポン飛び出していて怖いくらいだ。

そんなある日、問題の場所に行ってみると海老蔵がエキサイトしていた。周りの人にそれとなく話を聞いてみると、なんでも今日は美人社員の機嫌が良い日らしく、好感度が2倍上がる日だと宣言されたらしい。なんのこっちゃと思うし、そんな宣言をわざわざする女、まともではないと思うが、完全にポイント2倍デーだ。仕事を午後から有給にして花束を買いに行く、みたいなことを言っていた。

それを聞いたエグザイルは、こういう日こそ仕事の燃える自分を演出して好感度をあげる、とでも思ったんか妙にはりきって仕事していてすげえ暑苦しかった。

張り切る二人を尻目に、やはり僕はポイント2倍デーはボーナスタイムではない、普段は半分だということだ、騙されてはいけない、と思ったのだけど別にエグザイルも海老蔵もそんなに親しいわけではないので黙っていた。

けれども、そこで気が付いた。例えばポイント2倍デー、これは普段はポイント半分とペテンにかけられているわけだが、それは普段から日常的に買い物をする人に限った話である。つまり2倍デーしか買い物しない人はそこまで騙されているわけではない。

それと同じで、エグザイルと海老蔵も、完全に好感度が二倍になる日といわれて手玉に取られていて、今日勝負をかけるしかない!と普段のアプローチが半分の効果であることに気づかず燃えているが、日常的にアプローチしていない人にとっては、この好感度2倍デーは完全にボーナスタイムなのである。つまりどういうことが言いたいかというと、僕の出番なのである。

僕は普段からアプローチしていないので、今日だけ2倍、つまり普段は半分です、と言われても損をした気はしない。普段は損かーと萎えることなくアプローチをすることができる。書類を手渡すついでに語りかけた。

「すいません。今度、ご飯行きませんか」

「は?いやちょっと、すいません。いそがしくて」

「そうですよね」

すごいテンポよく断られた。全然2倍デーじゃねえじゃねえか。それどころか、立ち去る僕の背中に彼女と、その横にいた回転寿司のお茶が出てくるとこみたいな顔した女との会話が降り注いできた。

「誰、今の」

「ああ、あれよ、あそこの○○って部署でむちゃくちゃ嫌われてる人」

「うわー、ないわー」

結局、2倍デーは普段が半分ということである。けれども、2倍デーしか経験しない人にはそれは損ではないのだけど、好感度が0なものは2倍デーだろうがなんだろうが、0に何をかけても0、そういうことなのだろうと思う。

「有給なんてとってないで仕事しろよ」

「うるせえ、花を買いに行くんだ」

そう言いあってる海老蔵とエグザイルを尻目に、家に帰って補充したばかりの薬を尻に注入した。今日は症状が酷いので2倍デーと称して2本入れたけど、そんなに症状は改善されなかった。やはり2倍デーはそんなにお得じゃないのである。何事も。