2016-02-09から1日間の記事一覧

さとりの書とバイソン

柏田くんは確かに笑っていた。夕暮れの校舎はオレンジ色の光を反射していて、まるで空と一体化しているようだった。傾いた日は校舎だけでなく、渡り廊下の椅子に腰掛けている僕と柏田くんの顔もオレンジ色に染め上げていた。「なあ、さとりの書って何が書い…

SNS時代の走れメロス

メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。メロスは村のニートである。スマホに依存し、ネトゲで遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。 「【拡散希望】この王、酷い…

愛の才能

僕だって誰かに頼られると嬉しい。それは人間の本質じゃないかと思う。誰かに必要となれないよりは必要とされたい。誰かの役に立って喜ばれることは自分にとってもなかなか嬉しいことなのだ。 僕は基本的に職場で嫌われていて、ハワイ帰りの女子社員が拷問の…

心が叫びたがってるんだ

それは一通のメールから始まった。 「こんにちは。わたしのこと覚えていますか?」 今やスマホではLINEとGmailを使うことが主流となり、全く使わなくなったキャリアメールにそれは届いた。 「ごめんなさい。申し訳ありません、覚えておりません。どなたでし…

持たざる者

持っている者と持っていない者、その違いはなんだろうか。いや、そもそも「持っている」とは何のか。何を持っているかどうかの判定を下しているのか。それが分からないのだ。 「あいつは持ってるな」 そういったセリフを聞くことがある。往々にしてそれらは…

ONLY YOU

BOφWY 作詞 氷室京介 作曲 布袋寅泰 いつも愛は すり抜けたけれど (僕の仕事への愛はすり抜けがちで、頑張ろうと奮闘するのだけど、空回りのばかりしてしまう。そんな自分に落ち込むこともある) 傷つく事に おびえないで (でも、空回りに怯えたり、傷つく…

いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう

朝から話をはじめよう。すべてのよき物語は朝の薄明の中から出現するものだから。 早朝の風景には綺麗な物と汚い物が混在している。綺麗な朝焼けと朝もやの中に堆くゴミが積み上げられている。表裏一体のその危うさは深い慈しみがある。 ター ミナル駅からほ…

頭の中の天使と悪魔がB'zになった

古典的な手法になるが、心の中の天使と悪魔という表現は大変理に適っており、非常に合理的なものでないかと思う。ある人間の心の中、特に葛藤を描く場合、これらの表現はとても分かりやすい。 な ぜ分かりやすいのか。これはまず明確な対立構造が多くの読み…

奇跡は間に合わない

まるで雄大な動物の呼吸音のように深くて重い音を立てて電車のドアは閉まった。駅のホームという日常の風景との隔絶。僕はその光景を一抹の不安を抱えながら車内から見ていたのだ。 遠い山間の街まで行くこの最終電車、乗り過ごせばもう次はない。間に合わな…

何度確認してもXvideosなのである

駅へと続く大通りから少し離れた小さな路地。そこにかつては商店街だったであろう町並みが存在する。ほとんどがコインパーキングや住宅に作り変えられ、少しだけ残っている店舗も堅くシャッターを閉ざしており、今やその面影はない。 通 りの入り口の朽ち果…

ラブホテルだった

ラブホテルである。 目の前にあるのは希望の光、未来の礎、情熱の回帰、魂と魂のぶつかり合い、肉体と肉体の絡みあい、酒池肉林、狂乱の宴、見まごう事なきラブホテルである。 お およそラブホテルとは縁のない人生を送ってきた。さすがにあまりに縁がないと…