Overー顔のわりに小さな胸に関する新考察ー

Mr.Childrenの名曲に「Over」というものがある。恋の終わりにおける男心を綴った掛け値なしの名曲である。男らしく別れを受け入れるべきなのに、どうしても納得できない部分がある、けれども納得しなくてはいけない。男らしさっていったいどんなことなんだろう?という自分への問いかけが痛いほど理解できる。

切ないメロディに、まるで心情を切り取り何かで固めて文字にしたかのような歌詞だが、一点だけ腑に落ちない点がある。それがこの部分だ。

今となれば 顔のわりに小さな胸や 
少し鼻にかかるその声も
数え上げりゃきりが ないんだよ
愛してたのに 心変わりを責めても空しくて

Mr.Children [Over]より)

 彼女のちょっと欠点とも思える部分を思い出し、それすらも愛おしくて愛おしくて、なんで彼女が心変わりをしてしまったのか。でもその心変わりを責めてもどうしようもない。そんな重要な歌詞だ。

顔のわりに小さな胸

どうしても納得できない部分はここだ。彼女が胸が小さく、そこをやや不満に思っていた。つまり、この歌の主人公は巨乳好きであったことが伺えるが、それでも彼女を愛していたという歌詞だ。それはいい。そこはいい。いくら巨乳好きでも、他の部分がパーフェクトなのに胸が小さいからという理由で付き合わなかったとしたら、それはなかなかに執着しすぎていて気持ち悪い。巨乳好きだが胸が小さくとも愛していた、それこそリアルな彼の魂の叫びではないか。

けれども、「顔のわりに」の部分である。ここが本当に理解できない。基本的に全ての歌詞が理解できる分かりやすいものであれとは思わないが、この曲に限っては、男心を如実に投影していて、分かりすぎるほどに分かるものだから、この一部分がどうしても気になってしまう。

「顔のわりに小さな胸」、逆説的に言えば彼女は巨乳であるべき顔だったが、貧乳だった。そういうことだろうか。なんだか怪しくなってきた。一点でも不可解な点があると曲全体が怪しく思えてしまう。

それまでは、「好きな人ができたの」と、急に別れを切り出されて、彼女の幸せを願って身を引くべきなんだけど、彼女のことが好きすぎてどうしたらいいか分からない、というかわいそうな男の曲だったのに、なんか別れるか別れないかの修羅場で乳の話題が最初に出てくる男で、普段から乳のことばかり彼女に言ってたんだろうな、そりゃあ彼女もいつか言わなきゃと別れを切り出すタイミングを計っていたんじゃないの、なんて思えてしまう。

よほど理解不能でどうしてよいのか分からなかったのか、10年以上前の僕も、同じよな主旨のテキストを執筆している。今回、あれから長い時間が経過してそれなりに社会経験も積んできた。そういった状況から「顔のわりに小さな胸」に関して新しい見解が生まれてきたのでそれを報告したい。

では、最初に以前の「顔のわりに小さな胸」に関する見解をまとめておきたい。

 

1.彼女は巨乳顔であった

巨乳っぽい顔とでも言うべきか。この顔には巨乳が付随しているべきでしょう、という顔が存在し、彼の彼女はその巨乳顔だった。でも貧乳だった。詐欺ではないか?そいうことかもしれない。

これに関しては、「巨乳顔」で検索をかけると衝撃的な情報が飛び出してきたのでそれを記載したい。

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

Yahoo知恵袋での質問であるが、「巨乳顔」ってどんなものですか?典型例などあったら教えてください、という切実な質問だ。注目すべきは、この質問が2015年12月31日に投稿されている点だ。質問者は、なぜ大みそかに巨乳顔が気になったのか。どうしてこれから紅白を見てゆく年くる年を見て、という時に巨乳顔が気になり、Yahoo知恵袋に投稿するまでに至ったのか。何がそこまで彼を追い詰めたのか。その心理を暴くことの方が巨乳顔より重要かもしれない。

この質問に長文で回答している人がいるのだけど、要約して抜粋すると

巨乳顔とは

1.輪郭は細いよりも丸い顔
2.鼻は長く細いよりも短く丸い鼻
3.口は薄いよりも厚い唇の顔だと巨乳の可能性が高くなるようです。

個人的には「巨乳の可能性」という単語がお気に入りだが、いまいちピンと来ない。たとえ彼女がそのような顔であったとしても、顔から言って巨乳のはずなのに貧乳だ、でも愛してる、とは完全に暴論だ。この説は違うのではないだろうか。

 

2.単純に顔がデカかった

落ち着いて考えると、顔と乳を結び付ける時点でかなりの無理がある話なのである。あまり深読みしすぎると思考のラビリンスに陥ってしまい、目の前に見えている正解に気づかないこともある。僕らは常に深読みしてしまいがちだが、真相はもっと単純で簡単なものなのかもしれない。

つまり、彼女は顔がデカかったのではないか。顔がデカいから乳もデカいはずだ。完全に暴論である。こんなことを言ってるから別れを切り出されるんじゃないだろうか。

 

3.実は顔に書いてある

こういうことだ。

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これなら納得で、顔に書いてあるくせに貧乳だった、と筋が通る。けれども、まっこと言いにくいけど、こういう女の子なら別れを切り出されて良かったんじゃないだろうか。執着する理由もあまりないような気がする。

 

さて、ここまで「顔のわりに小さな胸」に対する見解をまとめてみたが、ここからは新たな見解である。これまでの長い期間において周囲の方々から様々な助言をいただき、自分自身も様々な経験を通して考えを深めていった。そして一つの正解のようなものにたどり着いた。

基本的には、正解は「2.単純に顔がデカかった」が近い。けれども、普通に顔がでかいから乳がデカいはずだというのは乱暴であることも既に述べた。これは一般的に顔と乳の大きさを比較することがナンセンスであるからだ。君は顔がでかいから乳もデカいはずだね、ってワンカップ持って言ってるオッサンがいたらなんだこいつと思うはずだ。けれども、それが不自然でない状況だったとしたらどうだろうか。それが答えである。

 

新説 これが「顔のわりに小さな胸」の真相だ!

「きゃあああああああーーー!」

「どうした美幸!?」

「は、はじめちゃん、あれ!?」

ドーン!

それはまるで雪の中に置かれた人形のように、バラバラになった若葉さんの死体が転がっていた。

「くそっ!放課後のマジシャンめ!」

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「なるほど、そういうことか」

「何かわかったの?はじめちゃん」

「謎は全てとけた」

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「みなさんにお集まりいただいたのは他でもありません。わかったんですよ、放課後のマジシャンの正体が」

「そんな!?あれは頭のおかしい殺人鬼の仕業じゃ」

「いいえ、若葉さんを殺しバラバラにした放課後のマジシャンはこの中にいる!!!」

「!!!???」

「いいですか、もう一度若葉さんの遺体を発見した状況を思い出してください」

「いやあああああ」

「目を覆いたくなるほど残忍な現場でしたが、それも犯人の狙いだったのです」

「あっ・・・?そういえば、バラバラになった若葉さんの体のパーツ、なんか違和感が」

「そうなんです。あの遺体、頭部は確かに若葉さんのものだった」

「あああ、そうか!」

「そうなんです、顔は確かに若葉さんのものだった。なのに、明らかに胸のパーツが小さいんです。他のパーツに比べて胸のパーツが小さいんです」

顔のわりに小さな胸・・・・」

「そう、若葉さんの遺体の一部は別の少女のものだった。そうするとアリバイが崩れる人がいます。そう、若葉さんを殺した放課後のマジシャンはお前だ!有村!」

「はははは、俺が放課後のマジシャン?だったら遺体発見前にかかってきたあの電話はどう説明するんだ?」

「あの電話のトリックも解明済みだよ。お前は音声を変えて電話をかけ、アリバイをし確保した。けれども少し鼻にかかるその声も、お前が遠隔操作で電話を掛けたことを示している」

「はんっ!なんで俺が若葉を殺さないといけないんだ」

「この手紙さ。この手紙を偶然見つけて確信した。お前が放課後のマジシャンである根拠を数え上げりゃきりがないんだよ!

「若葉・・・」

「この手紙にはこう書いてある。自分が病気でもう先が長くないこと。有村君には新しい彼女も見つけて幸せになってほしい。でも有村君は優しいから病気だからっていっても別れてくれないよね、だったら私が悪者になろう。新しい好きな人ができたって嘘ついて別れよう。それくらい、いいよね」

「若葉、そんな・・・俺、どうしていいのかわからなくて、嫉妬で狂いそうで、愛してたのに 心変わりを責めても空しくて・・・

「悲しい気持ちのすれ違いが生んだ魔物だったのさ。放課後のマジシャンは」

「若葉ああああああ!」

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病室のレースのカーテンからこぼれてくる日差しが若葉を照らしていた。

「ねえ有村君、将来って考えてる?」

「うーん、あまり考えてないかな。腹いっぱい美味しいものが食えればそれでいいよ」

「有村君らしい」

そういって笑った若葉の笑顔はどこか儚げで、そこか悲しそうだった。

「若葉・・・」

「ダメ」

「どうして?」

「なんか風邪っぽいからって先生に言われてるの」

若葉は風邪が伝染るといけないからキスはしないでおこうって言ってた。でももう、あの時から若葉は決心してたんだな。俺の将来のために自分は消えようと。考えてみるとあの頃から君の態度は違ってたんだ。

「ねえ、別れるっていったらどうする?」

「なんで?別れたいの?」

「ううん、でもいざとなればどうするかなって」

「バカなこと言ってないでほら、横になりな。もうすぐ面会時間も終わる」

「うん。電話してね。寂しいの」

「わかった。毎晩君が眠りにつくころあいも変わらず電話かけてやるから」

「うん」

その夜の電話で、若葉は言った。そして僕は放課後のマジシャンとなったのだ。

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「なあ、金田一。俺は地獄いきかな?」

「いや、お前は地獄にも天国にもいかない。生きて罪を償うんだ」

「ふふ、死んだら若葉のところにいけるかな。なんてまるでその気はないけどな」

「有村・・・」

わからなくなるよ男らしさって一体どんなことだろうな」

夕焼けに舞う雲、遠くでチャイムが聞こえた。

「金田一、俺はお前に憧れていた。お前を見てあんな風になれたらいいなってずっと思ってた。お前みたいに何も考えずに生きたかった。俺はいつも考えすぎて失敗してきたから

「有村・・・」

「一つだけ教えてくれ。どうして胸のパーツだけ別なものを使ったんだ。アリバイ工作なら別に手でも足でもよかっただろうし、それならあまり違和感も感じなかったはず」

有村は少しだけ笑って夕陽を見た。その横顔は深いオレンジ色に染まっていた。

「胸は若葉が病気だった場所なんだ。ずっと気にしてた。だから、だから・・・」

「だから晒したくなかったってわけか」

「お前に俺の気持ちが分かるのか、金田一、俺の、俺の気持ちが」

「わからないよ」

「!?」

「殺人鬼の気持ちなんてわかりたくもない」

「うわあああああ、わかばあああああああ」

泣き崩れる有村。もうどこにも放課後のマジシャンはいないことを悟った。愛しき人よさよなら、夕陽にかかる雲からそんな声が聞こえたような気がした。それは若葉の声のような気がした。

 

これもう正解だろって思って、Mr.Childrenファンの同僚の女性に話したところ、「勘違いされると嫌なんであまり話しかけないでもらえますか。あと、バカなことばかり言ってると上司に相談しますから」とピシャリですよ。あまりの冷たさにびっくり。結構好意的に思ってくれてる女性だと思ってたのですが、まあ、心変わりを責めても、です。完全に言葉にならない悲しみのトンネルをさあくぐり抜けようですね。

 

 

「Over」http://www.numeri.jp/d7.htm