「ハリーポッターと賢者の石」を1ミリも見ていないのにレビューを書いてみた

2001年がもう15年前という事実に僕はひどく腰を抜かした。15年と言えば3歳だった子供が18歳にもなる月日である。「マンマー」とか言っていたかわいい子供も「ゴム付けて」とか言うわけである。これはもう途方もない年月だ。

じゃあ15年前に自分は何をしていたのか、思い返すと全く記憶がない。しかしながらインターネットというものは偉大で、15年前といえどもインターネットに文章を書く活動をしていた僕は、その記録を読み解けば何をしていたのかよくわかる。こうして15年前、自らが残した文章どもを読んでいると、途方もないものが飛び出してきた。

「見てもないのに映画レビュー」

まるで「矛盾」の語源になりそうな相反する事象を一緒くたにしたセンテンスだが、どうやら15年前の僕は見てもいない映画のレビューを書くことにご執心だった御様子で、一心不乱に1ミリも見ていない「ハリーポッター」のレビューを一生懸命書いていた。アホである。

見ていない映画のレビューを書くという行為の是非はともかく、これを読んでみるとまあ、稚拙なものである。ちょっと恥ずかしくて赤面してしまうレベルで、これはもう、いっちょ15年の時空を超えてもう一度書くべきではないか、そう思ったのである。

この15年で僕には一つの進化があった。以前に書いた時はハリーポッターというものを全く知らずに書いたが、今は「魔法」が出てくるということを知っている。USJに行って「魔法が出てくる」「白いフクロウがでてくる」という2点を学習したので、相変わらずハリーポッターは読んだことも映画を見たこともないが、それでも15年前の僕と決別するため、途方もない歳月を超えてもう一度シリーズ第一作目、「ハリーポッターと賢者の石」のレビューを書いてみたい。

 

「ハリー・ポッターと賢者の石」見てもいないのに映画レビュー

真っ暗闇の中から怪しげな歌が聞こえる。どこか子守歌のように聞こえるメロディだが、その歌詞はどの言語にもあてはまらないような不思議なものだった。しかし、なんだか祈りのようにも聞こえるそれは、どこか心に残るものだった。

しばらくすると暗闇の中に小さな光が見えて、徐々にその光へとカメラが近づいていく。光は魔法陣であった。うっすらと白く光る魔法陣の中央に全裸の女性が横たわっている。少しだけ魔法陣の光が強くなる。それと同時に魔法陣の周りに立つ怪しげな覆面の二人組が現れた。

「これも失敗か」

「ええ、今度こそはと思ったのですが」

「急げ、復活の時は近い」

「ははっ」

そのまま画面が暗くなっていき、バサバサッとCGのカラスが画面を横切ってデーンと「ハリー&ポッターと賢者の石」とタイトルが表示される。なかなかワクワクするオープニングだ。

一転して、明るいロサンゼルスの街並みが映し出される。車は渋滞し、人々は忙しそうに歩いている。ロスは活気のある街だ。通りに面したテラス席でお米バーガーを口いっぱいにほおばる男がいた。

「へい、お米バーガー追加で」

ものすごい勢いで食べる男に道行くロスッ子たちも驚きを隠せない。怪訝な顔をしながらも髭の店員がバーガーを運んでくる。

「へい、電話がなってるぜ」

男の机の上に置かれた携帯電話が振動している。画面には「ハリー」と表示されていた。ハリーからの着信のようだ。

「いいんだ、どうせつまらん要件さ」

そう言ってまたバーガーをほおばる男。しかし、あまりにしつこいので仕方なく電話に出る。

「なにをやってるんだ!ポッター!」

怒号が響き渡った。ポッターは驚きでお米バーガーを喉に詰まらせる仕草を見せた。

「な、なんだい、ハリー。今ちょうど聞き込み中でさ」

ペプシを飲んでなんとか取り繕うポッター。しかし電話の向こうのハリーは冷静に言い放った。

「どうせいつもの店でお米バーガーとペプシだろ、いいから4丁目のモーテルにこい。課長からのご指名だ」

あごと肩の間に挟み込むようにして携帯電話を固定し、両手で新しいお米バーガーの包みを開けようとしていたポッターの手が止まった。

「殺しか?」

ポッターの問いかけに電話の向こうのハリーは一呼吸おいて答えた。

「ああ、殺しだ。それもどうにも不可解な事件だ」

その答えを聞くや否や、ポッターはお米バーガーを口にほおばり、愛車のシボレーに乗り込み、爆音だけを残して去っていった。

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「ひどい殺し方をするねえ」

惨殺された遺体を見てポッターは静かに笑った。遺体は主に下腹部を中心に傷つけられていた。

「おい、状況は」

ポッターが周囲の警官に問いかける。

「被害者はマリアアンダーソン、24歳、この街で娼婦のようなことをして生計を立てていたようです。3日前から行方不明になっていました。その際に、上客に会いに行くととルームメイトに言い残しています」

「なるほどねえ、ホトケさんは娼婦か。しかしなんだって下半身をこんなに」

「全く不可解です。ただ、血液反応がほとんどありませんから、殺害自体はこの部屋ではありません。どこか別の場所で殺されてここに運ばれたようです」

「ふむ。確かに不可解だな。ハリーはどう思う?あれ?」

周囲を見回すポッター、しかしハリーの姿は見えない。

「ハリー刑事でしたら、1階のリビングに」

「またか」

ポッターはやれやれといった表情で立ち上がった。

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「へい、また読書か」

「ああ、今ちょっと夢中になって読んでいる本があってね」

リビングのソファーに腰かけて読書をしているハリー。すぐ横にポッターが座る。

「それよりも仏さんみたか。ありゃあかなり陰謀の匂いがするぞ」

「俺が死体を見れないのを知ってるだろ。ダメなんだ、血とかそういうの見ていると気が遠くなる」

ハリーは血とかそういうものが苦手な刑事だ。ただ、捜査能力と射撃の腕はピカイチなので刑事として活躍できている。逆にポッターはそういった事件が好物で、残忍であればあるほど目が輝いてくる。

「今どんな本を読んでるんだ?」

「ふふ、いまはな、これを読んでるんだ。近藤麻理恵先生の「人生がときめく片付けの魔法」という本だ。すごいんだぞ、あっという間に部屋が片付いちまう。家にあるものを必要なものと必要でないものに分けてだな」

「もういい、分かった。大丈夫だ。俺は散らかっている部屋が好きだから」

「いいからきけ、この近藤麻理恵先生はだな。今ニューヨークで流行っていて、本当に魔法のように部屋が片付く方法を」

そこに制服警官がやってきた。

「どうした?」

ポッターは助かったとばかりに制服警官の話に耳を傾ける。

「はい、実はガイシャのバッグにこんなものが」

「これは?」

それは小さなバッヂだった。金色の魔法陣を象った図形の中心に石が配置されている不思議なものだった。

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「何かわかったか?」

ロス市警の刑事課オフィスはいつも慌ただしい。事件の報告をするハリーとポッターに刑事一課課長が質問する。厳しいながらもどこか温かみがある課長で、キャリア組とは違い、叩き上げの経歴を持つ男だ。

「はい、ガイシャが所持していた謎のバッヂですが、鑑識に調べさせたらどうやら賢者の石コーポレーションの信者が持つバッヂのようでした」

「賢者の石コーポレーションか」

「以前からあそこは表向きは会社ですがその実態は過激な宗教団体ではないかといわれています、課長、ぜひ捜査をさせてください!」

「ダメだ、令状がおりんよ。そもそも容疑はなんなんだ?被害者がバッヂを持ってたからって家宅捜索までは無理だ」

「そうですか」

諦めてデスクへと戻るハリーとポッター。書類仕事を片付けようとするハリーにポッターが近づいた。

「ちょっといいか。喫煙所いこう」

「ああ」

いつも二人が秘密の会話をするときは喫煙所が定番だ。ハリーはポッターが何かを企んでいると知ってすぐさま喫煙所へと移動した。

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「俺は賢者の石コーポレーションに潜入しようと思う」

「大丈夫か?そもそもあそこは社長が署長と懇意にしてるんだ。いつも週末は一緒にゴルフさ。だから課長もああやって慎重な姿勢を見せる。所詮俺たちデカもサラリーマンだからな。バレたらただじゃすまないぞ」

「なあに、うまくやるさ」

「気を付けろよ。なんだか嫌な予感がするんだ」

「大丈夫、なんとかなるだろう」

それ以来、ポッターからの連絡は途絶えた。

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「お願いです。強制捜査を!」

ハリーは課長に詰め寄った。

「だから無理だと言っただろう。容疑が弱すぎる」

「そんなことはないはずです!なんですか?上から事件化しないように言われてるんですか?署長と懇意にしている賢者の石社との関係を荒立てるなということですか?」

「そ、そういうわけじゃない」

課長は明らかに狼狽した。

「それに、潜入すると言ったきり、ポッターと連絡がとれないんです!」

「ば、ばかな!?潜入だと!?勝手に捜査したのか?」

「どうしても解決したかったんです」

「し、始末書もんだぞ!」

大人しくデスクで始末書を書くハリー。そこに若手の刑事が近づいてきた。

「もしや、ハリーさんも潜入するつもりですか?」

「ああ、鈴木君、君か。もちろんそのつもりだ。俺はポッターを救いだなくてはならない。課長には内緒にしていてくれよ」

「ん、それはできないですね」

鈴木は首を横に振った。

「おいおい、研修で世話してやっただろ」

「課長に報告します。それが嫌だったら、僕も連れて行ってください。僕だってポッター先輩を救いたいんです」

「スズキ・・・」

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ハリーはターミナル駅のフクロウの像の前で待っていた。白いフクロウの像は待ち合わせのメッカらしく、イケフクロウなどと呼ばれていた。これから飲み会に繰り出す大学生の手段や、デートに心躍らす若者が立っている。

「お待たせしました。賢者の石社の本社はこの近くです。行きましょう」

時間通りに鈴木がやってくる。

「君はやけにくわしいな」

歩きながらハリーが話しかけると鈴木はハリーを一瞥もせずに言った。

「ちょっと事情がありましてね」

何らかの思惑があることは感じ取れた。鈴木が純粋にハリーを救いたいだけでないことは予想できた。それでもハリーは鈴木に頼るしかない。ポッターを救うため、鈴木の思惑に乗るしかないのだ。

「さあ、つきましたよ」

そびえたつ賢者の石コーポレーションの本社ビル。月夜の闇に怪しげな佇まいで銀色のビルが建っていた。

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「こっちです、足元気を付けてください」

ハリーと鈴木はビルへの潜入に成功していた。地下のリネン室から出入り業者が使うコンテナを介して潜入し、業務用エレベーターのシャフトからダクトへと移動していた。

「まるで迷路のようだな」

「ええ、まるでアメリカンクラッカーのようですよ」

おそらくジョークを言い合うシーンだと思うのですが、この辺の会話がよく理解できなかったのですが、たぶん翻訳が良くないんでしょうね。戸田先生あたりが翻訳してくれていたらどういう表現になっていたのかきになるところです。

「行く手が二手に分かれています。僕はこっちに行きますのでハリー先輩はこっちに。何も見つからなければさっきのリネン室で落ち合いましょう」

「ああ、わかった」

鈴木と別れるハリー。そこでダクトが行き止まりになります。その行き止まりの排気口から下の部屋を覗くと、なにやら監禁されている女性がいるのです。

「ちょっといい加減に出してよ!」

仮面をつけた男は何も反応しません。

「何とか言いなさいよ。この縄を解いて!」

女性は縛られた状態で暴れ始める。仮面の男は懐からスタンガンを取り出す。

「ちょっと、何する気なのよ、やめなさいよ!やめてーー!」

その瞬間、仮面の男の体から力が抜け、まるで糸が切れたマリオネットのように倒れこんだ。

「大丈夫か?」

その後ろにはハリーが立っていた。

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「私の名前はアケミ、弟がこの賢者の石教に入信したまま帰ってこないから信者のふりして潜入して探していたの。そしたらバレちゃってさ、捕まって洗脳されるところだった。ありがとう。あなたはどうしてここに?」

「仲間が捕まっていてね」

初対面で屈託もなく話しかけてくるアケミ。不思議な女だった。

「それだったらきっと最上階の祈りの間にいるはずよ。わたしが信者のふりして入手した情報だから、確かなはず」

「なるほど」

アケミに案内されるまま最上階を目指す。

「でも心強いな、刑事さんが一緒なんて。これで弟を救い出せるはず。幼い頃に生き別れた私の弟はこ私と同じこのペンダントを持っているの。これだけは捕まっても取られないように守っていた」

「いやあ、刑事と言っても銃も打てない、血を見ると失神してしまうようなポンコツでね」

ハリーは自分のことを話し出した。アケミは不思議な女だ。なんでも話したい気持ちになってしまう。

「あら、どうして?」

ハリーは思い出したくもない記憶を思い出していた。

あれはまだ新米の刑事だった頃だ。ロスの外れにあるスラムで盗難事件が発生した。たまたま別件で聞き込み捜査に来ていたハリーはその現場を目撃してしまう。すぐに銃を構えた。

「フリーズ!」

しかし、窃盗犯は止まらない。やむを得ず威嚇発砲することにした。しかし、横を走っていたトラックがその発砲音に驚き、ハンドル操作を誤り、そのまま歩道へと突っ込んだ。悪いことに、そこには道路に落書きをして遊んでいた幼い命があった。

「あの時の母親の叫びが忘れられないんだ。血の色が忘れられないんだ」

それ以来、ハリーは訓練以外で銃を打てなくなった。死体を見ることもできなくなった。それは刑事として致命傷だった。

「そんなダメな俺をカバーし、救ってくれた男が捕らえられてるんだ。絶対にたすけなければいけない」

アケミは黙ってハリーの話を聞いていた。

「きっと、あなたは優しすぎるの。それは悪者を相手にする刑事には向いていないかもしれない。でも、その優しさに救われる人だってきっといる。わたしみたいね。なにも悪人を懲らしめるだけが刑事の仕事じゃないんだから」

ハリーは少し考え込んで、思い出したかのように懐から銃を取り出した。

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いよいよ最上階の大広間に到着したハリーとアケミ。しかし人の気配はない。

「任せて、たしかここにスイッチが」

アケミが壁のスイッチを操作すると、大広間に明かりがともった。

「ポッター!」

部屋の中央には、怪しげな器械が置かれていた。その器械に固定されているポッターの姿があった。

「く、くるなー!ハリー!これは罠だ!」

ポッターの声を合図に器械が動き出す。下部に備えたバルカン砲のような部分から一斉に射撃が行われ、無数の砲弾がハリーに向けて放たれた。

「くっ!」

間一髪でそれを躱すハリー。白い床が無数の砲弾で黒く変色していた。

「おっと、さすがハリー刑事だ。体術は一級品ですな。でも、実戦では射撃すらできないダメ刑事」

ポッターを捕らえている機械の横に仮面の男が立っている。

「あれが賢者の石教の教祖。賢者の石社CEOにして宗教団体トップの男よ」

アケミが仮面の男を指さして言う。

「自己紹介ありがとう、お嬢さん」

仮面の男はそっと仮面をはぎ取った。

「す、鈴木・・・?」

そこには後輩刑事、鈴木の顔があった。

「苦労しましたよ、あなたたち二人に怪しまれないように近づくのは」

「なんだってこんなことするんだ?」

ハリーは詰め寄る。

「わが社はずっと賢者の石を追い求めていた。それは選ばれし人間の体内で錬成される石だ。あらゆる金属を金に変える触媒で、不老不死の秘薬すらつくれるその石を探し求めていた」

「それでこんな宗教を・・・」

「いろいろ探したさあ、そして殺して体内を捜索した。けれども全部間違いだった。しかし、やっと見つけたんだ。この男こそが選ばれし男だと。そして体内で石が錬成されつつあると。それが賢者の石だ」

鈴木はポッターを指さす。すぐにポッターは反論した。

「違う、単なる尿路結石なんだ。最近痛いなって思ってたら尿路結石ができただけなんだ。それなのにこいつらが訳の分からないことを言い出して」

「黙れ!」

鈴木はポッターの右頬に拳をめり込ませた。

「教祖さんよ、どうやらそれは不摂生な食生活からできた尿路結石のようだぜ」

「ふん、古文書にあるのだよ。選ばれし人間の体内で錬成された石を、選ばれし人間の絶望と共に取り出す。そうすればそれが賢者の石になると。だから絶望のためにお前をおびき寄せたのよ。こいつの目の前でお前を殺し、絶望と同時に石を取り出す」

襲い掛かるキラーマシーン。それを間一髪でかわすハリー。ここの戦闘シーンはかなりの見どころで、なんでもこのシーンの撮影で3人のADが死んだらしいです。かなり必見のアクションです。

キラーマシーンによって追い詰められるハリーとアケミ。

「くそ、あのキラーマシンをなんとかしないと。それにはあの操作している鈴木の動きをとめるしかない」

「でもどうやって?」

ハリーは鈴木の足元に注目した。キラーマシンのメンテナンス作業をしていたのか、足元は燃料やオイルで散らかっている。その中の一つ、あのボンベを撃ち抜けば、おそらくキラーマシンを制御できなくなるだろう。

銃を構えるハリー。

「おやあ、怖い刑事さんが銃を構えてどうする気かね?実戦では撃てやしないくせに。怖くて撃てやしないくせに」

「くっ」

同時にキラーマシンがハリーに襲い掛かり狙撃の邪魔をする。

「一瞬でいい。誰かキラーマシンの動きを止めてくれ」

「私に任せて」

アケミが一歩前に出る。

「タカシ、これを見なさい」

アケミが取り出したのはあのネックレスだった。

「ねえ、ちゃん?」

「そう、あなたの姉よ。きっとあなたも同じネックレスをもっているはず。声を聴いてすぐに分かったわ。あながたがタカシだって。20年もほっといてごめんね」

「ねえちゃん、今更なんだよ。俺はもう」

「いまだ!」

ハリーの脳裏にスラムでの光景がフラッシュバックする。母親の悲鳴。徐々に呼吸が無くなっていく小さな子供。血の匂い。手が震える。ダメだ。やっぱり撃てない。構えをやめようとしたとき、若かりしポッターの姿が浮かんだ。

「大丈夫。ハリーは優しすぎるだけだから。やらなきゃいけない時を待ってるだけだよ」

「そうだよな。ポッター、やらなきゃいけないときにやらないでどうするんだ」

ゆっくりと銃を構えなおす。そして、足元に転がっているボンベを撃ち抜いた。

大きな爆発が起こる。そしてキラーマシンは動きを止めた。

「どうして、どうして」

鈴木は爆発に巻き込まれて瀕死の状態だ。すぐにアケミが駆け寄る。

「姉ちゃん、ごめんな。俺、幸せになりたかっただけなんだ。だからいっぱいお金を稼いで、賢者の石を手に入れて」

「大丈夫、姉ちゃんがついてるから。そんな石なんかなくたって幸せになれるから。ずっと一緒だから」

鈴木は薄れゆく意識の中でハリーに話しかける。

「ハリーさん、どうして銃が撃てたんですか。絶対に撃てないと思ったのに」

銃を懐にしまいながらハリーは答えた

「撃てるさ。必要ならば。それにボンベとかはきちんと片付けた方がいいぞ。必要なものと必要でないものを分けて片付けるのは片付けの魔法の基本だ。近藤麻理恵先生の著書にも書いてある」

「魔法か・・・」

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遠くからサイレンの音が聞こえる。

きっと課長が手配してくれたのだろう。ああいっても課長はハリーとポッターのことを第一に考えてくれている。

「大丈夫か、ポッター?」

「ああ、大丈夫だ。ただ大丈夫でもないが。いや大丈夫なのか?」

ポッターが変なことを言う。ハリーはポッターを固定していた金具を外していく。

「ん、なんか濡れてるぞ」

「いやあ、さっきの爆発にビビッて漏らしちゃったよ。でも、同時に結石もとれたみたいだ。痛みもなくなった」

「うわっきたね」

「なにいってんだ、これは賢者の石だぞ、ほら立派な尿路結石」

「やめろって」

本社ビルに集う無数のパトカー。ロスの町が優しく微笑みかけているように見えた。

「ハリー&ポッターと秘密の部屋」につづく

 

 

 

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