トイレご利用の際は店員に一声おかけくださいはもうやめよう

「トイレご利用の際は店員に一声おかけください」

けっこうこうやって掲示しているコンビニのトイレってあるじゃないですか。ドーンと威風堂々とトイレのドアに貼ってあったりするんですけど、こいうのね、うん、うん、わかってる。それでも言いたい。こういうの、そろそろやめにしませんか。

いやいや、もちろんこちらは借りてる側ですし、貸してくれるだけありがたいとか、防犯上の理由だとかそういったことも十分に理解しているんですが、それでもこれはやめたほうがいいと言うしかない。そう思うんです。

だってコンビニの店員さんて概ね知らない人じゃないですか。言ってしまったら赤の他人な人で、常連でもない限り圧倒的に初対面な人なわけでしょ。そんな初対面の赤の他人に「これから私はウンコします」って宣言するわけですよ。これってどうなのって思うわけなんですよ。

例えば気心知れたカップルだった場合、デート中に「わりいわりい、ウンコしてくるわ」「もう!」とか「ごっめーん、むっちゃでっかいウンコ出た!」「(かわいいな、佐和子、どんなうんこなんだろう)」とかってウンコ宣言も気楽にできるかもしれませんけど、ショッピングで春物のニットとか見ててこれからスタバで文庫本でも読もうかと佐和子が考えてる時に全く知らない人がやってきて薄笑い浮かべながら「僕、これからウンコします」って宣言してきたら、これはもう狂人ですよ。それどころか頭の中を疑うレベルだし、ちょっと大きめの、入院患者用に売店と食堂があるレベルの大病院を受診したほうがいいんじゃない、って声を大にして言いたいし、親の顔が見てみたい。さぞかしウンコみたいな顔してるんだろうな!おとといこいや!このチンカス!いやウンカス!

だいたい、言われる側のコンビニ店員さんもたまったもんじゃないですよ。圧倒的多数の知らない人のウンコ宣言を聞くわけですから、そりゃあ途方もない精神的苦痛ですよ。関白宣言でもけっこうキツイのにウンコ宣言ですからね。それだけで時給を200円上げてもいいくらい。中には笑顔で「どうぞ!」って言ってくれる店員さんもいますけど、内心では「勝手にしろよ、汚すなよ」くらい思ってますよ。

そもそも、不毛じゃないですか。そうやって掲示していいるコンビニって絶対にトイレ貸してくれるわけですよね。うんこ宣言に対する答えは常にYES。SAY YES。じゃあ声をかける必要もないと考える人も出てくるわけですよ。じゃあ、これが店員による審査制だったらどうしますか。トイレ貸すも貸さぬも店員次第、店員が圧倒的権力を有しているんです。いまやこのコンビニは店員の支配下、わらわに嫌われたらトイレも使わせぬぞ。

そうなったらやっぱ比較的気に入られるような感じで「できればトイレを使いたいかいかがでしょうか。もちろん綺麗に使います。清掃もします。なにとぞご配慮くだされば幸いです」みたいな感じで申し出ますよ。ちょっとおにぎりとか買ったほうが気に入られるかな?とか考えますよ。そうするならひと声かける意味も出てくると思うんです。

もしくは、何かRPG的にですね、普通に買い物してる分には会話は定型文で「600円になります」とかなのに、ウンコ宣言をすると急にフラグが立ってイベントが始まってですね。

「すいません、トイレ借ります」

「トイレ……ああ、なんて懐かし響き!」(フラグ成立)

「!?」

「魔王がトイレを闇に覆って以来、絶望だけがこの村を包みました」(魔王イベント開始)

「おねがいします勇者様!あの憎き魔王を倒してこの村に光を!」

「オイラは武器屋のバッカス。魔王討伐に出るっていうなら力を貸すぜ」

~中略~

「我は魔王、すべてのトイレを憎む者ぞ、フハハハハハ」

「くそっ、なんて巨大な力。これが闇と契約した者の力か」

「アタイ、アンタに出会ってこうして旅をしてきて、少しはオヤジの気持ち分かった気がするよ。じゃあな。アンタに会えてよかったよ」

「ジャナクなにを!」

「アタイが自爆して隙を作る。その隙に攻撃するんだ!」

「やめろ!」

「おいおい、これから光を取り戻そうって勇者様がなんて顔してんだい。あたしゃあんたのために死ぬんじゃない。コンビニでトイレを求めるみんなのために死ぬのさあ」

シャナクーーーー!」

ヅシャワーーーーー

「どうしました、マリア様」

「北の方角に光の柱が。予言の通り……運命の勇者がきっと私の元にやってくる。けれども私の命の灯火も持ちそうにありません」

「マリア様……」

「魔王の力を抑えるためにずっと祈り続けてきましたがもう限界です。勇者が訪ねてきたら、わかりますね、ミランダ」

「はい、北の祠の封印を解く」

「そうです。立派になりましね、あなたがこの孤児院に捨てられていた日のことを昨日のことのように思い出します。頼みましたよ」

「マリア様……」

このへんでやめとこう、このへんでやめとこう。ミランダとシャナクは姉妹なんですけど、やめとかないと全11話書いてしまうのでこのへんでやめておきます。

ああ、結局、あれほど不毛な行動ってあまりないと思うんで、そろそろできれば「トイレご利用の際は店員に一声おかけください」みたいな掲示は廃れてくれたらなって思うんです。表面張力の戦いに入ってる時に「すいませんトイレ借りジョルビチュラルビッチョア」みたいな不幸な結末も全国で毎日3件は起こってる計算になりますしね。

一応、僕は掲示されていたら従うことにしてるんですけど、この間重要度でいうとP3レベルの腹痛だった時に、レジに行ったら店員さん誰もいなくてですね、バックヤードとかに行ってるのかな、まだ比較的余裕があるからいいけど、本番だったらおおごとだぞ、これ、と大声でウンコ宣言しようかとも思ったんですけど、ちょっと探したらパンの棚のところに店員さんがいたんですよ。

「すいません、ちょっとウンコしてきますんで!」

って軽快に宣言したら、店員さん

「はあ」

とあまり明快ではない返事。比較的わかくてかわいい感じの店員さんでしたから戸惑ったのかもしれませんね。やっぱりこの宣言、いらないよ。

意気揚々と、城門を突破する感じでトイレにありつき、やっぱりウンコ宣言は必要ないよな。絶対に必要ないわ。知らない人にウンコするって宣言する必要も、される必要もない。この世でいらないものランキングつけたらAVの終盤の3Pの次くらいにランクインするわって考えながらトイレ出ると先ほどの店員さんがレジにいるじゃないですか。

なんかよく見ると客側に立ってパンを買ってるじゃない。

いやね、店員っぽい服を着た女の子だったわ。ファミマっぽい服着てたんだけど、ここローソンだしな。

いやー、パンを買おうと選んでいたら知らない人がやってきて薄笑い浮かべながら「僕、これからウンコします」って宣言してきたら、これはもう狂人ですよ。それどころか頭の中を疑うレベルだし、ちょっと大きめの、入院患者用に売店と食堂があるレベルの大病院を受診したほうがいいんじゃない、って声を大にして言いたいし、親の顔が見てみたい。さぞかしウンコみたいな顔してるんだろうな!おとといこいや!このチンカス!いやウンカス!

もうやめようぜ、こういうの。