TUBEは夏の季語って彼女がいったから

蝉の声がかすかに響いていた。もうすっかりと聴こえなくなったと思っていたけど、この山深い森では微かに聞こえるようだ。ここだけ夏が名残惜しく残っているかのように思えた。

 

朝夕の冷え込みはまさしく秋のそれで、日が照った日中は汗ばむような暑さであっても、確実に夏の撤退と秋の侵攻を意識せざるを得ない、そんな日々が続いていた。だから、この蝉の声は少し意外で、ちょっとだけ残された夏を拾い上げたような、すこし得した気分になった。

 

ワイヤーの入っていないマスクが欲しい。ワイヤーが入っていると鼻のところが擦れて血が出る。祖母がそんなことをいうので、近くのドラッグストアでワイヤーの入っていないものを箱で買い、わざわざバスを乗り継いで届けた。

 

玄関先に出た祖母は、本当に鼻の部分に定規で当てた線のように傷ができていて、右手でこちらを制しながら「ソーシャルディスタンス!」と叫んでいた。仕方なく、そのまま帰ることにした。本当にこのババアだけは何とかして欲しい。人を呼びつけておいていつもこれだ。結局、いつものように売り言葉に買い言葉、喧嘩みたいになってしまった。

 

少しだけ黄金色になりかけた棚田の真ん中を歩いてバス停へと向かった。ときおり吹き抜ける風が稲穂を揺らし、用水路から大量に流れ込む水の音が聴こえた。

 

小さな木造のバスの待合所は著しく傾いていて、その横の壁にはどれだけの年代を経たのか見当もつかないマルフクの赤い看板が斜めにかかっていた。待合所内に貼られたバスの時刻表は文字がかすんでいてほとんど読めないし、たとえ読めたとしても古文書みたいに変色しているこれを信じていいものかと思えた。

 

また、遠くに蝉の声が聞こえた。

 

しばらく待っていると、その蝉の声に混じって足音が聞こえてきた。その足音は待合所の前で止まり、しばらく間をおいてマスク姿の女性がひょいと中を覗き込んだ。誰もいないだろうと思っていたのに、先約がいたことに驚いたようだった。彼女は躊躇する素振りを見せたが、少しだけ傾きかけた日差しを嫌ってか、待合所内の離れた場所に腰掛けた。

 

目が綺麗だと思った。

 

マスクをしていて目の部分しか見えなかったが、彼女の目は綺麗だった。待合所に差し込むややオレンジ色の光が彼女の瞳をよりいっそう際立たせていた。ただ、それは美しいのだけど、どこか悲しみを帯びているようにも感じた。

 

そこで初めて、膝の上に置かれた彼女の量の手に、小さな骨壺が握られていることに気が付いた。それは本当に小さいもので、薄ピンク色の布に包まれていた。

 

「ペットですか?」

 

たしか、祖母の家があるこの辺りより、さらに奥深い森の中にペット霊園があったはずだ。そこでは火葬もやってくれたはずだ。彼女はペットを亡くしたのだろう。そしてそこで火葬してもらったのだ。

 

「ええ、ハムスターを飼っていたんですけど。今朝がた……。それで調べたんですけどこういう場所にしか火葬してくれる場所ないんですね」

 

彼女は目をくりくりさせながらそう答えた。

 

「たしかに、住宅街のど真ん中で火葬ってわけにはいかないですもんね」

 

僕の言葉に、彼女は深く頷き、まるでその存在を確かめるように手元の骨壺に視線を落とした。

 

また沈黙が待合室を満たした。気まずい感覚だけが残った。本当にバスは来るのだろうか。話しかけたのは良いものの、こうして会話が途切れてしまうと気まずさしか残らない。こんなことになるくらいなら話しかけない方が良かった。

 

蝉の声が少しだけ弱くなっていた。

 

ふいに彼女が口を開いた。いや、マスク越しにそれは見えなかった。けれども、彼女はしっかりとこちらを見て言い放った。

 

「TUBEってどうして夏の季語じゃないんでしょうか?」

 

予想外の問いかけに完全に面食らってしまった。

 

「え? TUBE? あのアーティストの? 季語? え?」

 

戸惑っていると補足するように彼女が続けた。

 

「季語って、植物だとか自然だとか伝統行事だとかだと思いがちじゃないですか。それも昔からあるものみたいな。けれども、最近の言葉でもあるんですよ。アイスクリーム、アイスコーヒー、アイスティ、アロハシャツ、ハンモック、サングラス、みんな夏の季語です。コレラだって夏の季語なんですよ」

 

「はあ」

 

あまりに勢いよく喋るものだから彼女のマスクは次第にズレ、鼻の頭のあたりまで見えるようになっていた。

 

「ようは、みんなが夏と感じるものが夏の季語となりうるわけなんです。だったらTUBEは夏の季語でしょう。みんな夏を感じる」

 

「そう、そうなんですか」

 

「ベストセラー・サマー、シーズン・イン・ザ・サン、SUMMER DREAM、Beach Time、SUMMER CITY、あー夏休み、夏だね、夏を待ちきれなくてだって夏じゃない夏を抱きしめてゆずれない夏あの夏を探してOnly You 君と夏の日を、 RIDE ON SUMMER、夏が来る! 夏だと丸わかりのタイトルをあげただけでもこれですよ。「夏だね」なんて開き直ってるとしか思えない。夏っぽくないタイトルでも聴いてみたら夏やんてものばかりですよ。これが夏の季語じゃないならなんなんですか。え? お?」

 

夏の季語じゃないならアーティストなんだろうと思ったが言わないでおいた。

 

「アイスクリームが夏の季語でTUBEが夏の季語じゃないのはおかしい。だって私、冬にコタツに入りながらアイス食べるの好きですもん」

 

彼女の息遣いは荒い。もう蝉の声は聞こえなくなっていた。

 

この彼女の主張はもっともだけど、一か所だけ相いれない部分がある。彼女が落ち着くのを待って、反論を試みた。

 

「僕だって冬にコタツでアイス食べるの好きですよ。でもそれでもアイスは夏の季語だと思います。だって、そうじゃない季節に食べることで強烈にその季節を意識するんですから。冬にあっても夏を連想させる。だからアイスは夏の季語です」

 

彼女は少し考えこむ素振りを見せた。

 

「そういえば……」

 

もう彼女のマスクは顎のあたりまで下がっており、口を開く素振りが丸見えだった。

 

「そういえばTUBEはずっと夏にライブツアーをしていたんです。「N・A・T・S・U」とか「世界の果てまで夏だった」みたいに完全に開き直ったタイトルでやっていたんです。それでも次第に冬にもやるようになって、なんだったかな、確か「冬でごめんね」っていうこれまた完全に開き直ったツアーだったかな、あの時に、夏じゃないTUBEに強烈に夏を感じてしまったんです。冬の方が夏じゃん、TUBEってそう思ったんです」

 

「そういうものですよ」

 

「だから夏の季語ですよね、TUBEは」

 

彼女はそう言って笑った。とてもその笑顔が似合っていて、理由もなく胸がドキドキするのを感じた。

 

また、差しむ光のオレンジ味が強くなり、彼女をより魅力的に照らしていた。よく見ると、彼女は大粒の涙を流している。

 

「そうじゃないときの方がその存在を強く意識する、か……。この子もそうだったな。いなくなってすごくこの子の存在が強いものだってわかった気がする」

 

彼女は手にしていた骨壺を強く抱え込み、もう一度視線を落とした。今度は僕が彼女の言葉を受けて深く考え込んでしまった。

 

「いなくなってからその存在が強くなるか……」

 

そこに、すこし荒っぽいエンジン音を響かせて待望のバスがやってきた。僕も彼女もゆっくりと立ち上がった。ただ、僕はバスの入口を通りすぎて、そのまま歩き出した。その姿に気が付いた彼女が振り向いて話しかける。

 

「乗らないんですか?」

 

「ええ、マスクのワイヤーで赤くなった場所に塗る薬を婆ちゃんに持ってきたの忘れてました。届けてきます」

 

「次のバス、3時間後だよ?」

 

「それまで、ソーシャルディスタンスとって婆ちゃんと話してます」

 

「そっか。じゃあ、これで。楽しかったです」

 

「僕も」

 

バスのエンジンがせかすように唸りをあげる。

 

「ねえ、やっぱりTUBEは夏の季語だよね」

 

「きっとそうですよ。自分がそう思えばなんだってそうだと思います」

 

バスのエンジン音に混じって蝉の声が聞こえる。

 

「あ、蝉の声。まだここは夏だね。夏が残ってるね」

 

「そう、夏だね」

 

その言葉に彼女はまた笑顔を見せた。しっかりと骨壺を抱えた姿で。

 

彼女を乗せたバスはあっという間に木々が折り重なる坂道を下り見えなくなった。僕は棚田の真ん中を「笑顔が似合う」と謳いながら祖母の家へと向かった。稲穂が擦り合う風の音に混じって、また遠くの蝉の声が聞こえた。

 

 

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ジーンズメイトノスタルジア

はじめて東京にいったのは19歳の時だった。確か、ネットで知り合った友人に会いに行ったのだと思う。


はじめて見る東京は本当に大都会で、なんだか恐ろしさすら感じるほどだった。今日は祭りですかな? と言いたくなるほどの人混みなのに、祭りではないらしい。今でもはっきり覚えているのだけど、その時は広末涼子主演の「20世紀ノスタルジア」という映画をやっていて、新宿のあちこちにそのポスターが貼ってあった。


その時に衝撃を受けたのが「ジーンズメイト」なる存在だ。たしか、いまや映画館になっている建物のちょっと手前くらいにあったと思う。もしかしたら今でもその店舗はあるのかもしれない。その存在に僕はひどく驚いたのだ。


それはジーンズなどを中心にカジュアルなファッションを売る店なのだけど、なぜだかデカデカと「24時間営業」と書かれていたのだ。今でも覚えている。黄色い紙に相撲取りみたいなフォントでそう書いてあった。

 

田舎者だった僕は24時間営業で? 

カジュアルな服を? 

なんで?

 

とひどく混乱したものだった。夜通し売る意味がちょっとよくわからなかった。


深夜に、やっべ、ジーンズ切らしてた! よかった、ジーンズメイトが開いてた! となるならばまあ分かるが、そういう状況にならない気がする。本当に24時間売る意味がわからなかった。きっと、大都会東京の、それも新宿の店だから深夜にジーンズが必要になる人がいるんだろう、19歳だった僕は無理やりにそう理解した。

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それからずいぶんと年月が経ち、時代は平成から令和へと移り変わっていた。僕の手元に何十年ぶりかに「ジーンズメイト」という単語が燦然と存在していた。ジーンズメイト株主優待券が9000円分、巡り巡って僕のところにやってきたのである。


ジーンズメイトはいつの間にか結果にコミットするライザップの子会社になっているらしく、そのライザップの株を持っていた人がもらったらしい。ライザップとジーンズメイトが繋がらなくて不思議な感じがするが、とにかくその優待券が様々なところをたらいまわしになってきて、結果的に貰えるものなら何でも貰うという僕のところにやってきた。


これを持っていけばジーンズメイトで9000円分の買い物ができるらしい。僕の胸は躍った。やはり、あの日、初めての東京で観たジーンズメイトは僕にとって都会の象徴みたいなところがあった。そんなところで9000円分も買い物ができるのである。血沸き肉躍るとはまさにことなり。


ドキドキしながらジーンズメイトに行く。関西の店舗だった。たしか天王寺かどこかだったように思う。都会の一等地に構えられた綺麗な内装の店舗。やはりそこには都会の象徴たるジーンズメイトがあった。

ただし、一つだけ大切なことを忘れていた。


そう、初めてジーンズメイトをの存在を知り心をときめかせたのは19歳の僕だった。けれどもそれから歳月が過ぎ、このジーンズメイトに降り立った僕は40を超えたおっさんだ。ずっと気づきもしなかったけど、この年齢でジーンズメイトのカジュアルさはいささかきついものがある。


店内を徘徊して商品を物色していて気が付いたのだけど、やはり若者向けだけあって、そのファッションの攻撃性は高い。手提げバックなんかはプールの時に使うのかな? と思うほど無意味に透明だったりするし、財布などの小物もチェーンなどの攻撃力高めのギミックが付いている。鎖鎌とか売っていても違和感がない。それほどの攻撃性だ。


シャツの柄も、決して悪くはないのだけど、例えば自分と同い年の同僚が着ていたら「おいおい狂ったか」と言いたくなるような若作り的なデザインが多い。肝心かなめのジーンズもやはり攻撃力が高いものが多い。刺繍などが入っていて攻撃力+4みたいなデザインのものもある。


「もしかしておっさんが着るものってないんじゃないか」


落ち着いて店内を見回すと、やはり客層が若い。これはとんでもない場所に来てしまった。場違いな場所に来てしまったと足が震えてきたほどだった。やっとこさ自分のしでかしたことの重大さに気が付いたのだ。


それでも9000円分の無料券を無駄にしてはいけない。おつりが出ない券なのできっちりと9000円使い切らなければならない。攻撃力高めのジーンズか、シースルーバッグか、それとも鎖鎌サイフか。悩みに悩みぬいたが、どうしてもそれらが買えなかった。若作りした痛いおっさん、みたいになることを恐れたのだ。


結果、どんなに攻撃性が高くとも外からは見えない、という理由でトランクスを買うことにした。全般的にトランクスも攻撃性が高く、若者がはきそうなものが多かったが、落ち着いて探せば落ち着いたものもある。それらを9000円分購入することにした。


どれだけの枚数だったか正確な数は忘れてしまったが、レジのお姉さんが「トランクスの密輸でもするの?」みたいな表情で観てくるくらいの枚数だった。なんとかトランクスをチョイスし、事なきを得たように思えたが、そのチョイスにも大きな問題があった。


Lサイズしかなかったのである。


僕はまあ、デブなのでやはりパンツのサイズにおいてもXLくらいないときつい。なのにこのジーンズメイトにはXLサイズのトランクスがないのである。他のファッションは攻撃力高めのくせに、トランクスだけ攻撃力低めでLサイズが上限なのである。


「まあ、Lでもはけるだろ。9000円無駄にするわけにはいかないしな」


そう思ってLサイズを買い占めたのが間違いだった。


次の日から、そのジーンメイトのトランクスをはくのだけど、やはりLサイズは小さいのか、必ずその日のうちに破れるのである。ビリっとケツのところが豪快に破れるのである。普通に一人で仕事しているときなどは、お、破れたな、、と思うだけなのだけど、例えばけっこう深刻なトーンで怒られているときなど、破れたことがおかしくておかしくて、それでも怒られているから笑ってはいけなくて。とんでもない状態になってしまうのだ。


毎日、かならずトランクスが破れる。


この異常事態に最初は戸惑ったものの、そのうち慣れてきて、だいたい午後2時前後に破れる、というところまで掴んでくる。


そして、必ず尻の部分が破れるから、じゃあ前後逆にはいたらどうなるんだとやってみると、バリンと今度は豪快に前が破れる。尻が破れるより前が破れたほうが、なんかちんこがでかくてパンツが耐え切れなかったみたいな感じがして気分が良い。

そんな毎日のようにパンツが破れる日々において、事件が起こった。


サウナに行った日のことだった。脱衣所には体重計が置かれていて、そこに大学生の集団が群がっていた。どいつもこいつもひょろひょろで、ちんこなんかふにゃふにゃだった。なんかツイッターで「なう!」とか「ドルチェ&ガッバーナ」とか呟いていそうな感じだった。


そいつらが体重計の周りでワイのワイのしていて「やれ太っただとか」「俺が一番筋肉がある」とか大盛り上がりだった。僕はサウナの前後でどれだけ体重が変わったか知りたいので、入る前に体重計に乗ることにしている。彼らがいるとサウナ前の計測ができない。早く体重計あけてくれんかなとその光景を眺めていた。


やっと彼らの体重マウント合戦みたいな謎の儀式が終わり、体重計があいたので、さっそうとパンツ一丁の姿で向かった。それに気づいた大学生の一人が他の仲間に目で合図をする。


(おい、あのデブが体重計に乗るらしいぜ)


なんだか雰囲気的にニタニタと僕のことをバカにするような空気が流れていたのを感じた。


(何キロかな)


(ちょっと盗み見てやろうぜ)


(あのトランクスの柄やばくね)


被害妄想が過ぎるかもしれないけど、本当にそういう空気があった。でも、ここで引き返したら本当に負けた気がするので、僕は堂々と体重計に乗った。俺はデブだが何か? みたいな感じで乗った。その瞬間だった。


バツン!


トランクスが裂ける午後二時がやってきて、体重が確定する瞬間に裂けた。その裂けた瞬間に確定しかけた体重がちょっとだけ揺らいだのを見逃さなかった。


デブが体重計に乗った瞬間にパンツが裂ける。これはこの世の中の面白いランキングの中でもかなり上位に位置すると思う。8位くらいには入ると思う。


大学生たちは笑いを堪え、全然関係ないつるっぱげのじいさんまで笑いを堪えていた。この瞬間、脱衣所の中が今にも裂けるトランクスの様に張り詰めた空気で満たされた。


ジーンズメイトのファッションは攻撃力高いくせに防御力低いな」


焦った僕は体重計の上でわけのわからないことを呟いていた。


とにかく、こうしてデブはバカにされる。これはもうダイエットをするしかないのか。せめてLサイズが裂けない程度まで。それにはジムに入るべきか……。ということは結果にコミットするライザップか!

こうして、最初は意味不明だったライザップとジーンズメイトがひょんなことから繋がってしまい、体重計の上でケツをスースーさせながら、何かを納得したのだった。


19歳の時に驚いたジーンズメイト。僕にとってはそれは都会の象徴ではなく、尻がスースーする感覚の象徴でしかないのである。

「出会って4秒で合体」は本当に4秒で合体しているのか

「出会って4秒で合体」という名シリーズがある。いまでも多くの人々の心をつかんで離さない、そんな不朽の名作だ。

これは老舗AVメーカーであるアリスJAPAN(銀色の人が走っていてドッカンドッカン柱が倒れてくるオープニング映像で有名)が20083月に世に放った「麻美ゆま 出会って4秒で合体(20080314日発売:DV-888 / 収録時間:120分、アリスJAPAN)に端を発する一連の作品群だ。


本作は、大人気女優である麻美ゆまさん(2015AVから引退、現在はタレント業)を相手に、打ち合わせと称して普段の様子を撮影するところから始まる。序盤は本番(ダブルミーニング)以外の素の表情を撮影しつつ、他愛もない会話が続くが、突如(本作では映像開始から317秒)としてソファ(クリーム色)の後ろから男優(全裸)が登場し、麻美ゆまさんが「なに? なに?」と困惑しているうちに合体、となるものである。映像かしからじつに3分台で起こる怒涛の展開だ。


この作品の位置付けとしては当初は「ドッキリモノ」というジャンルであった。突如として絡みを初めて女優さんを驚かせるわけである。しかしながら、従来の「謎に新宿の雑踏(主に西口か西武新宿付近)or夜景(主に六本木)」「インタビュー」「絡み1」「絡み2」「3P「六本木の夜景」というテンプレかと思うほどに一連の手順を踏むありきたりな作品に比べて、話が早い(本作では映像開始から317秒で絡みが始まる)という特徴がある。


それらが評判を呼び、そういった非日常的シチュエーション、および突如として始まる絡みに戸惑いつつ快楽に身を委ねていく女優の様子も重要な要素となり、早い話、ユーザーに受けた。ヒットした。


識者の言葉を借りると、この「出会って4秒で合体シリーズ(以下、出会って4秒シリーズ)」が「AV業界に即ハメというジャンルを確立させた」(AVライター・文月みほ氏:週刊ポスト2017))らしい。この意見に対して識者としての僕の意見を言わせてもらうと、ある意味当たりであり、ある意味ではずれである。


この出会って4秒シリーズ以前にも「即ハメ」ものは数多くリリーズされていた。その中でも最も有名なものはアテナ映像(面接シリーズなどが有名)の「おはズボッ! (監督:大沼栄太郎)」シリーズであろう。これらは出会って4秒シリーズ以前より即ハメ(おはようの挨拶とズボが同時という意味)ジャンルを確立していた。


ただ、これらはいわゆる企画ものという枠組みを出なかった(当然そうでない場合もあるが)。「おはズボッ!」シリーズの多くがオムニバス形式をとっており(1本の作品において複数の女優が交代で登場)、女優名が前面に出ることはなかった(企画女優とも呼ばれる)。


そんな世相にあって出会って4秒シリーズは単体女優を起用した点で評価されたのだ。つまり、即ハメと女優名が同時に語られることとなったのだ。一挙両得である。この点で、後の作品にもたらした影響が大きく、このシリーズも「出会って4秒」というタイトルのインパクトから、鑑賞したことがない殿方でも何となく名前は知っている(知人の南山君もそう言っていた)、という地位を確立したのだ。


しかしながら、そこで気になる点がある。


「本当に4秒なのだろうか?」


当然の疑問だ。


鑑賞してみると分かるが、確かに話が早い。まだるっこしいインタビューはないし、それどころか愛撫的なものすら存在しない。いきなり始まる。しかしながら、いくらなんでも4秒は言いすぎなんじゃないだろうか。1、2、3、4、これで4秒である。いくらなんでも早い。そんなことが可能なのだろうか。

これはちょっと本腰入れて調べてみる必要がある。世の中の多くの事象は常に謎めいている。ということでまずは、この出会って〇〇秒で合体シリーズがどれだけ存在するのか、アリスJAPANの公式サイトより調査した。

 

出会って〇〇秒で合体シリーズ
・出会って4秒で合体 麻美ゆま2008
・出会って2.9秒で合体 原更紗(2008
・出会って3.1秒で合体 伊東エリ(2008
・出会って3秒で合体 松生彩(2009
・出会って4秒で合体 希志あいの2009
・出会って6秒で合体 桜リエ(2009
・出会って4秒で合体 辰巳ゆい2009
・出会って7秒で合体 朝日奈あかり2009
・出会って6秒で合体 花美ひな(2010
・出会って8秒で合体 美月リア(2010
・出会って5秒で合体 滝沢ひかる(2010
・出会って4秒で合体 優希まこと2010
・出会って3秒で合体 織田真子2011
・出会って4秒で合体 葵つかさ2011
・出会って4秒で合体 美雪ありす2011
・出会って7秒で合体 うるや真帆(2011
・出会って4秒で合体アゲイン 麻美ゆま2011
・出会って7秒で合体アゲイン 朝日奈あかり2011
・出会って4秒で合体アゲイン 優希まこと2011
・出会って4秒で合体 小島みなみ2011
・出会って4秒で合体アゲイン 辰巳ゆい2011
・出会って4秒で合体 奥田咲2012
・出会って4秒で合体アゲイン 葵つかさ2012
・出会って4秒で合体 小森愛(2012
・出会って4秒で合体 川上奈々美(2012
・出会って4秒で合体アゲイン 美雪ありす2012
・出会って4秒で合体 KAORI(2013
・出会って4秒で合体 前原友紀(2013
・出会って4秒で合体 木下あずみ(2013
・出会って4秒で合体 遠野えま(2013
・出会って4秒で合体 美里有紗2013
・出会って4秒で合体 麻美ゆま(待望のリモザイクバージョン:2013
・出会って4秒で合体 長澤えりな(2014
・出会って4秒で合体 雲乃亜美(2014
・出会って4秒で合体 伊東紅(2014
・出会って4秒で合体 宇沙城らん(2014
・出会って4秒で合体 長瀬麻美(2015
・出会って4秒で合体 彩乃なな(2015
・出会って4秒で合体 澁谷果歩(2015
・出会って4秒で合体 南まゆ(2015
・出会って4秒で合体してから(省略) 長澤えりな(人気シリーズコラボ:2015
・出会って4秒で合体 有沢杏(2015
・出会って4秒で合体 皆野あい(2015
・出会って4秒で合体して(省略)笹本結愛(2016
・出会って4秒で合体(都合により一部の語句を非表示:2017
・出会って04秒で合体 若菜奈央(2017
・出会って04秒で合体 涼風こうめ(2017
・出会って4秒で合体VR 桐嶋りの(2017
・出会って4秒で合体 紗倉まなSODとのコラボ:2012

総集編作品および廃盤作品は除外とした)

49作品である。

 

以上のラインナップより、まず公称で「4秒」以外の存在に気が付く。基本的には4秒中心であるが、それより短いもの、長いものも散見される。最速は2.9秒(廃盤も含めるとおそらく2.5秒が最速)最長は美月リア(2010)の8秒である。秒数の分布は以下のようになる。

 

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突出して「4秒」が多いことがわかる。全体に占める割合は驚きの80%である。つまり、「出会って4秒シリーズ」はその名の通り、その大半が4秒での合体を謳っているということである。さらにはタイトルに謳われる秒数の平均は4.285秒であった。

しかしながら、その他の秒数も決して無視できないものである。はじめに注目すべきは、4秒より長い秒数においては、5秒、6秒と秒単位であるのに対し、4秒より短いものは「3.1秒」「2.9秒」とコンマの戦いになっている点である。つまり、4秒より短い領域においてはタイムアタック的要素が存在し、コンマ1秒でも短くすることが命題だったのだ。

ただし、これらの「タイトルに表記された秒数」を発売年別に見ると面白いことが分かる。以下が発売年ごとの秒数の平均値である。

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このデータは示唆に富んでいる。まず、シリーズ開始年である2008年は、平均値を大幅に下回り3秒台前半の数値を示している。これは、「出会ってからの秒数が短いほど良い」といった思想に基づいたものといえる。

同時に「数字のリアリティ」を追求した結果とみることもできる。つまり、短ければ短いほど正義であったわけなので、実測された合体までの秒数をタイトルに付与していたわけだ。

しかしながら、実際に作品を見ると「出会って4秒」はかなりの難易度であることが分かる。ちょっとソファを乗り越えるのに失敗するだけで易々と4秒を超えてしまう。

そこで実測値を使っていったために「5秒」「6秒」とその秒数が伸びて行ったのではないだろうか。例えば5.5秒を5秒と表現することでなるべく短くみせようとしたのではないだろうか。それにより、4秒以上のものはコンマ秒数の表示がないのだろう。

徐々に実測値は伸び続け、2010年においてその平均値は6秒に届く勢いとなり、その後も増加傾向が続き、歯止めが利かないかと思われた。

しかしながら、2011年には一転して減少傾向となる。ここが重要なターニングポイントである。いったい何が起こったか。おそらくではあるが「4秒への回帰」が起こったのだろうと予想される。

秒数が減少に転じた2011年、このシリーズを語る上で重要な「AGAINシリーズ」が始まる。第一作目であった「出会って4秒で合体 麻美ゆま2008)」の好評を受けて、もう一度やろうと麻美ゆまさんを主演に続編として「出会って4秒で合体アゲイン 麻美ゆま2011)」が発売された。その後、シリーズ中で好評を博した女優は「AGAIN」として続編が製作される流れができた。

この続編の制作によって、「やはり4秒だね」と制作側、ユーザー側、双方が納得する現象が起こった。つまり「出会って4秒」が定番となったのである。これが「4秒回帰現象」である(識者B談)。それを裏付けるように、2012年以降は「4秒」しか制作されなくなっている。完全に4秒で定着したということだろう。

 

・本当に4秒なのか?

そうなると、途端に怪しくなってくるのが「実際に4秒なのか?」という点であろう。前述したとおり、シリーズ序盤はリアリティのある数値をうたっていた可能性が高いが、その後、定番化した後は4秒とは程遠いのに4秒をうたっている可能性が高い。そういうシリーズだからだ。

そうなると大問題である。「出会って4秒で合体」が4秒ではなかったということだ。それはつまりこの世から信じられるものがまた一つなくなってしまうということだ。

というわけで、出会ってから何秒で合体に至っているか詳細に調査する必要がある。そう考え、今回、本腰を入れて調査することとした。

まず、上記の「出会って4秒シリーズ」49作品すべてを、レンタル、中古販売、FANAZA動画(特にアリスJAPAN chはかなり重宝した:月額1800円で見放題!)、あらゆる媒体を駆使して入手した。そして、作品中の全ての絡みにおいて出会ってから何秒で合体にいたっているか測定した。

女優が男優の姿を視認(目線と驚きの言葉から判定)してから、合体(モザイクがあるので判定が難しいがコマ送りをして腰の動きから判定)した。

 

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一例として、シリーズ最初の「出会って4秒で合体 麻美ゆま2008)」の測定結果を以下に示す。

 

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いきなり1本目から衝撃の結果となってしまった。まずもって「4秒」で合体といたった絡みがそもそも存在していなかった。この結果には怒りすら感じる。

シリーズの1本目、それも最初の絡み、それくらい4秒であってくれと祈ったが、下着を脱がすのに手間取っており、実際には「18.26秒」もかかっていた。

2回目の絡みにいたっては「0秒」であった。これは少し事情がある。同シリーズは二回目の絡みにこのギミックを多用してくるのだが、完全なるゼロ視認合体(ノールック合体)を仕掛けてくるのだ。

グラビアの撮影、他の男優との絡みなどと説明して、女優さんを四つん這いにし、お尻を突き出させた体勢をとってもらう(業界ではこれを女尻ポーズという)、そこに背後のドアからこっそり入ってきた男優が合体するという技だ。この場合、ルール上は男優を視認しないので0秒となる。

3回目の絡みにいたってはめちゃくちゃだ。「2097秒」である。出会って2097秒で合体である。これがありなら、なんだってありじゃないか。ふざけないでいただきたい。

ただまあ、この現象も無理やりに擁護すると仕方がない部分もある。先ほど言ったように、絡み2では0秒合体が実現しているわけだが、それを実現するため、お尻を突き出させた体勢をとらせている(業界ではこれを女尻ポーズという)ために0秒合体する男優とは別に事前に別の男優と絡んでいるのだ。

そいつが完全なる当て馬では可哀想なので、その男優も0秒合体男優の絡みが終わるのをまってその後に絡むことになる。これが絡み3だ。つまり、絡み2が始まる女尻ポーズの時点で男優を視認しており、絡み2の後に合体するので、ルール上は「出会って2097秒で合体」となるわけだ。

絡み4にいたっては寝ている麻美ゆまさんにいたずらをするというシチュエーションから始まるため、麻美ゆまさんの世紀の狸寝入りを楽しむことはできるが、目覚めず(狸寝入り)視認がないまま合体となるため、これも0秒合体となる。

結果、平均すると528.97秒で合体。というわけで完全にタイトルに偽りありである。つまり「出会って約529秒で合体 麻美ゆま」と表記すべきなのだ。529秒、約9分だ。これでは普通の作品とそんなに変わらない。

シリーズ最初はリアルなタイムを記載していたのでは? とした前章の仮説が早くも崩れ去る結果となった。一体全体、どこが4秒なのだろうか。

一作目から「出会って約529秒で合体」ということで動揺が隠せないし、もう調査する意味もないような気がするが、アリスJAPANチャンネル(月額1800円)に入会してしまったので、シリーズの作品すべてを調査していくことにした。作品ごとの平均合体秒数の測定結果を以下に示す。

 

f:id:pato_numeri:20200924192135j:plain

 

これらは生データの羅列であるが、傾向を読み解くためにデータを整理しなくてはならない。

便宜上、作品の制作年月日順に作品ナンバーを付与し、ナンバーごとの平均秒数を示した。つまり、右に行くほど新しい作品である。

注目すべきは平均秒数400秒付近の異常データが3つある点だ。これが突出しているために全体の傾向が掴みにくい。これは晒し上げるようで申し訳ないが、1つは、先ほど述べた1作目のNo.01麻美ゆま、もう一つもNo.33麻美ゆまである。この2つは同じ作品であり、No.33の方がリモザイクと呼ばれる、もう一度モザイク編集をやり直した作品になる。基本的にモザイクしか編集しないため、平均秒数は同じになっている。3つ目の400秒越えの作品は、No.45笹本結愛(2016)である。これは比較的新しい作品であるが、これまでの4秒シリーズの伝統を打ち破る新しいスタイルという謳い文句で制作されている。その新しいスタイルが仇となったか、絡みが2つしかなく、しかも片方が900秒も要しているためこのような結果になってしまった。これらの諸事情により長くなった絡みを消去して平均値を算出しなおす。

 

f:id:pato_numeri:20200924192338j:plain

 

ここではじめて注目すべき傾向が表れる。この結果は大きく分けて2つのグループに分けることができる。

 

f:id:pato_numeri:20200924192427j:plain

 

大変興味深いことに、シリーズの前期と後期で明白に絡み時間の傾向が変化する。前期、つまり青で囲った作品が古いものほど、その平均値は乱れが大きく、平均値としても高い傾向にある。

逆に、シリーズ後半、赤で囲った新しいものになるほどその乱れは小さくなり均一化する。そして平均値も低くなる。

ではここで何が起こっているのか。これはズバリ、マンネリ化である。シリーズも25作も超えると、この4秒シリーズはアリスJAPANの看板シリーズとなる。つまり、出演する女優はドッキリということになっているが本当にドッキリであっても心の中で「ははーん、4秒シリーズだな」と受け入れているのである。そのため予定調和的なデータに落ち着く。

逆に初期は、何が起こったのか分からず、抵抗した方がいいのか、しない方がいいのか、そういった戸惑いが生じている。つまり即ハメドッキリという本来の趣旨から考えると、前期の作品の方がリアリティがあるといえる。

1作品の中でもマンネリがある

しかしながら、マンネリに焦点を当てるなら、どうしても同じ作品中のマンネリも考慮しなくてはならない。上記のデータは、1作品中の平均値を用いているため、実際にはほとんど意味のないデータだ。

なぜなら、最初の絡みで出会って4秒で合体とドッキリをしたとしても2回目、3回目の絡みとなるとどうしても「これはそういう撮影だ」とばれてしまう。そのために、女尻ポーズからなどのギミックを使う必要がある。これが作品中でのマンネリだ。

作品中では、それらを打破しようと様々な試みが行われている。例えば、「出会って7秒で合体アゲイン 朝日奈あかり2011)」などでは、普通の撮影に見せかけて、レフ板を突き破って全裸の男優が登場してくる。バイオハザードも真っ青の大迫力シーンだ。

そういった試行錯誤はみられるが、やはり2回目、3回目の絡みとなると「出会って4秒」の概念から大きく逸脱すると言わざるを得ない。

それを排除し、真に意味のあるデータを得るには、1番最初の絡みの秒数だけに着目しなくてはならない。その結果を以下に示す。

f:id:pato_numeri:20200924192545j:plain

 

これらのデータから言えることは、「波動」である。波動とは単純に言ってしまうと波のことである。出会って4秒で合体は波なのである。

 

f:id:pato_numeri:20200924192643j:plain

 

これらは波動関数を用いて最適化すると驚くほど一致する。これは単なる偶然では片づけられない。では、なぜ「出会って4秒で合体」シリーズに波の考え方が導入されているのか。ここからは推論の域を出ないが、筆者は次のように考える。

 

波に乗って移動する粒子を考えてみよう。Wikipediaにとても分かりやすいアニメーションがあったので引用させてもらう。

 

f:id:pato_numeri:20200924192732g:plain

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B3%A2%E5%8B%95より引用

 

波に乗って移動する粒子はこのように動く。ここで粒子に着目すると、粒子自身は上下に振動している。この振動を見て何かを想起しないだろうか。そう、この動きこそが合体における動きを象徴しているのである。はっきり言ってしまうとセックスとは波動である。

制作者は、これを表現したくて出会って4秒シリーズに波動の要素を取り入れた、といえる。

 

・なぜ4秒と銘打ったのか

波動はともかく、シリーズ全ての絡みの秒数を調査したが、4秒と呼べるものは存在しなかった。そんな状況にあってなぜ「出会って4秒」と銘打ったのか。そんな絡みひとつもないのにだ。

これには様々な考え方があるが、古来より、4は区切りを表す数字として使われてきた側面がある。今話題のオリンピックなどの大きな大会も4年周期だし、4大〇〇、四季など、物事や期間を区切るのに4が使われてきた。

つまり出会ってから、合体までの流れを人間同士の関わり合いを区切りと考えると、一番4がしっくりきたのではないだろうか。そう考えると「出会って3秒で合体」「出会って5秒で合体」は収まりが悪く、「出会って4秒」が収まりが良いように感じる。そういった感覚からつけられたタイトルではないだろうか。

・まとめ

出会って4秒シリーズにおいては、波動による強烈なメッセージが隠されていたが、実態は4秒とは程遠いものであった。「出会って4秒で合体」が4秒ではなかった。この世から信じられるものがまた一つ失われてしまった。

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スーパーボールの中にキン消しが入ってるやつを作りたい!  

幼い頃、キン消しに夢中だった。

 

キン消しとは「キン肉マン消しゴム」の略で、文字通りキン肉マンの消しゴムだった。

 

f:id:pato_numeri:20180330134714j:plain

 © ゆでたまご東映アニメーション

(画像はバンダイ公式より引用http://gashapon.jp/kinkeshi/

 

ご覧いただいても分かる通り、キン肉マンに登場する超人の形を模した消しゴムだ。なぜかそのほとんどが鮮烈的な肌色をしているのが特徴だ。

 

消しゴムとは謳っているが、消しゴムとしての機能はほとんどなく、文字を消す働きは期待できない。一度、小学校の算数のテストの時に消しゴムを忘れてしまい、これは終わったと思ったが、奇跡的にポケットに入っていたベンキマンのキン消しで消そうと試みた。けれども、全く消えず、それどころか鉛筆の黒が広がるばかりでテスト用紙は汚くなるし、ベンキマンも真っ黒になるだけという事態が悪化しただけの散々な思い出だった。とにかく、消しゴムとして働けないくせに消しゴムを名乗っているとんでもないやつだった。

 

しかしながら、当時の僕たちはこのキン消しに夢中だった。とにかく夢中だった。そのうちキン消しが貨幣として流通するのではないかと思うほどにみんな夢中だった。

 

キン消しの入手ルートは主に2つあった。一つは、スーパーの店先に置かれているガチャガチャ、もう一つはおもちゃ屋で買ってもらう、というものだった。後者は少し品質の良いキン消しだったし、好きな超人を選べるというメリットがあった。しかしながらそれは邪道という考え方が主流で、僕らはもっぱらガチャガチャでキン消しを入手し、どの超人が出るのか運を天に任せてキン消しを手に入れていたのである。

 

そんなある日、行きつけのスーパーに新しいキン消しのガチャが導入された。しかも、普通のキン消しが手に入るガチャが確か100円という値段設定であったにも関わらず、新しいガチャは200円という強気の値段設定だった。一体どんなキン消しが手に入るのか、皆の興味はそこに移った。

 

けれども、ガチャに200円はあまりに高い。駄菓子屋に行けば十分に豪遊できる金額だ。そんな大枚を1つのキン消しに賭けることができなかった。誰もが手を出せずに見守っていると、近所の金持ちの御子息、いわゆるお大尽のガキがやってきて、何の躊躇もなくその200円のガチャをやってのけた。200円のガチャを、さも当然のごとく、あまりまえのごとく、200円のガチャをやってのけた。200円のガチャを。

 

200円のガチャはキン消しが入ったカプセルではなく、大きなスーパーボールを輩出した。ガチャのカプセルと同じ大きさなのでスーパーボールとしてはかなり大きい部類に入ると思う。それが出てきた。わっと周りにいた貧乏人のガキどもが駆け寄った。

 

そのスーパーボールはただの良く弾むスーパーボールではなかった。少しオレンジがかった透明のスーパーボールで、中にキン消しが入っていた。確かアシュラマンだったと思う。普通のアシュラマンキン消しがそのまま大きいスーパーボールの中に入っていた。見方によってはアシュラマンがスーパーボールに閉じ込められているような感じだった。

 

探したけど資料が全くなかったので個人ブログから引用させていただくと、次のような品物だ。

 

f:id:pato_numeri:20180330134837j:plain

MC勇一の、やるっつぇ!ブログより https://ameblo.jp/kin29man2sei

 

かなり年季の入った逸品である。これはそのシルエットから悪魔将軍が入っていると思われる。経年劣化でスーパーボール部分に濁りが生じているが、当時は透き通っていてそれはそれはカッコよかったんだろうと思う。

 

僕らは当然ながらこのスーパーボールを欲した。けれども手が出なかった。さすがに2倍の値段設定はおいそれと手が出るものではない。ただ、キン消し入りのスーパーボールへの憧れだけが募っていったのだ。

 

それからしばらくして、行きつけの駄菓子屋にスーパーボールクジなる新サービスが導入された。ババアから券を買ってクジを引くと、数字が書いてあって、壁に吊るされているスーパーボールの中から該当数字のスーパーボールが貰えるというものだった。

 

そのクジの特賞は、キン消しが入ったスーパーボールだった。確か主人公であるキン肉マンだったと思う。当然ながら金の続く限りそのクジを引いたが、当たるのはゴミのようなスーパーボールばかりだった。また、キン消し入りスーパーボールへの憧れだけが強まる結果となってしまった。

 

僕はキン消しもスーパーボールも好きだった。その好きだった二つが合体したキン消し入りスーパーボール、それこそ盆と正月が一緒に来たどころか、同時に意味不明に5千円くれる軽薄な感じの遠い親戚のオッサンがふらりとやってきたくらいの喜びがあった。キン消し入りスーパーボール、それくらいの存在だった。欲しかった、どうしても欲しかった。なんならオッサンになった今でも欲しいくらいだ。

 

完璧なる球体フォルムに透明の輝き、その光の奥にかっこいいキン消しが幽閉されている。今にも動きだしそうだ。そして、そのボールを床に落とすとスーパーボールなので躍動感をもって跳ねる。とにかく跳ねる。こんなすごいことってあるだろうか。もう完全に心鷲掴みにされていた。

 

けれども、いくら思い出そうとしても僕の思い出の中に件のキン消し入りスーパーボールを手に入れたというエピソードがない。つまり、僕の思いは満たされなかったのだ。

 

僕の人生がいまいち満足いくものでない理由は、これなのかもしれない。あれほど憧れて欲した物体を手に入れることができなかった。この手で鷲掴みにすることができなかった。その思いが僕の人生をつまらないものにしている。

 

もうあの頃と違って大人としての財力がある、機動力もある、いまなら夢を手にすることができるんじゃないかと思い、色々と探してみたが、どうしてもキン消し入りスーパーボールを手に入れることができなかった。また、夢は夢のままなのか、そう思ったとき一つの考えが浮かんだ。

 

こうなったらもう作るしかないだろう。

 

こうしてあの日の夢であったキン消し入りスーパーボールを作成することにした。

 

 

 

 

 

まず、洗濯ノリを最寄りのホームセンターで購入してきた。シャツとかをパリッとさせるやつだ。100円くらいで売ってる。

 

f:id:pato_numeri:20180330135018j:plain

 

ちなみにこの洗濯ノリ、ノリというくらいなのでドロドロの液体だ。ポリビニルアルコール(PVA)と呼ばれる物質が主成分である。構造式は次の通り。

 

f:id:pato_numeri:20180330135050j:plain

 

簡単に言ってしまうと分子がずーっと長い鎖のように連なった物質だ。すごく長い糸だと思ってもらえればいい。

 

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このドロドロの液体を紙コップに入れて、同じくらいの量の水を入れる。

 

次の登場するのがホウ砂と呼ばれる物質。

 

f:id:pato_numeri:20180330135217j:plain

 

これは大きなドラッグストアなどにいくと売っている。50 gで700円くらいするのでまあまあ高い。主成分の化学式はこちら。

 

f:id:pato_numeri:20180330135314j:plain

 

洗剤なんかに使われたりする薬品だ。

 

f:id:pato_numeri:20180330135419j:plain 

 

この粉末をだいたい5 gくらい別の紙コップにとる。

 

f:id:pato_numeri:20180330135452j:plain

 

こいつも水で溶かす。

 

f:id:pato_numeri:20180330135527j:plain

 

良く混ぜる。

 

f:id:pato_numeri:20180330135609j:plain

 

 

こうしてPVAの水溶液と、ホウ砂の水溶液ができる。あとはこいつらを混ぜてよく撹拌してやると、

 

f:id:pato_numeri:20180330135639j:plain

 

f:id:pato_numeri:20180330135705j:plain

 

このようなネバっとした物体が完成します。ベロベロに伸ばしたりし遊べる代物です。これはいわゆる「スライム」と呼ばれる物質を作る手法で、かなり有名な実験です。実際にはここに絵の具を投入し、色とりどりのスライムを作って子供たちが遊んだりするのです。

 

さきほど、PVAが長い糸みたいな物質だと言いましたが、ホウ砂に含まれる物質の一部は、その長い糸を橋渡しする性質があります。何本かの糸が橋渡しされて網目のような構造になり、そこに水が入ってくるので、ドロドロのスライムのような物体が出来上がります。

 

実は、このスライムづくり、投入する水の量を適切に調整すると、ドロドロのスライムではなく、強固に橋渡しされたスーパーボールのような物質を作ることも可能になります。もう一度、PVA洗濯ノリから秘伝の分量で作成すると次のようなものができます。

  

f:id:pato_numeri:20180330135805j:plain

これもう、完全にスーパーボールでしょ。

 

弾ませてみるとめちゃくちゃ弾む。

 

 

f:id:pato_numeri:20180330170202g:plain

 

スーパーボールだわ、これ。スーパーボール以外の何物でもない。

 

ということで、この手法を用いて、キン消しを投入して作成すれば憧れのキン消し入りスーパーボールが完成するわけです。早速やってみましょう。

 

とはいったものの、そもそもメインであるキン消しを入手することができませんでしたなので、なるべくキン消しに近い物で代用します。

 

f:id:pato_numeri:20180330140034j:plain

 

 

これで作ります。

 

f:id:pato_numeri:20180330140104j:plain

 

同様の手順でPVA洗濯ノリを入れます。

 

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そこにキン消し代わりの人形をいれます。

 

f:id:pato_numeri:20180330140155j:plain

 

完全に沈んだ。

 

ここに、秘伝の配合で作ったホウ砂水溶液を投入し、思いっきり撹拌します。みるみる固まっていき、ついに、スーパーボールが完成しました。あの遠かった日、あれほど憧れたキン消し入りスーパーボール、それがついに完成したのです。どうだ、これがキン消し入りスーパーボールだ!見よ!

 

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ただのゴミじゃねえか。

 

なにこれ、猫がごく稀に吐き出す毛玉?

 

激しく混ぜると空気を含んじゃって白濁するんですね。中に何が入っているか全然分からない。それでも確かにこの中に人形は入っているんです。見えるか見えないかは大きな問題じゃない。そんなことを気にしてはいけない。確かに人形入りスーパーボールを作ることができたのです。

 

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ちゃんと入っている。なんかエイリアンに捕まった仲間を助けにエイリアンの巣に侵入したら一歩遅くて、もう餌に加工されちゃった、みたいな状態になっていますが、確かに入っている。

 

これにてキン消し入りスーパーボール完成!

 

え? ちゃんとスーパーボールみたいに弾むのかって?

 

しらねえよ、たぶん弾むんじゃねえの。どうだっていいよそんなこと。

 

さて、こうして夢であったキン消し入りスーパーボールを作成することはできましたが、やはりキン消しで作れなかったことが大きな心残りとなります。やはり、キン消しで作りたい、けれどもキン消しを入手できなかった。

 

ということで、自分の中でキン消しくらいのランクで心奪われたもので作成すれば、OK、そういうことにしませんか。いいですか? そうですか、気にするな、好きにやれ? ありがとうございます。お心遣い感謝いたします。ということで早速お言葉に甘えまして、以下の人形でスーパーボール作りたいと思います。

 

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綾波レイ

 

いや、綾波はいい、確かにキン消しと同じくらい心奪われた、それは間違いないんだけど、明らかにでかい。

 

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さっき作ったゴミと比べるとそのでかさは一目瞭然。3倍はある。

 

ちなみに、長さが3倍のものをスーパーボールのような球体で包もうとした場合、その容積は3倍にはなりません。球の体積は3乗で効いてきますので、長さが3倍なら体積は3の3乗、つまり27倍の体積が必要ということになります。PVA洗濯ノリがさっきのゴミの27倍必要、これを準備するのは狂気の沙汰と言うしかない。とてもじゃないがそんなに大量に準備できない。

 

 

 

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準備しました。狂気の沙汰到着。だいたい7.5リットルほどのPVA洗濯ノリ。それに対応したホウ砂も準備しました。ドンとこいや。

 

 

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もう紙コップじゃ無理なので、バケツにどんどこ入れていきます。

 

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バケツいっぱいの洗濯ノリ。どれだけ洗濯すればこれを使いきれるんだ。

 

 

綾波レイ投入。

 

 

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沈んでいく綾波

 

 

綾波ィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!

 

そして、ホウ砂も大量に投入し、かき混ぜる。

 

 

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量が多すぎて全然固まらない。

 

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もう面倒だ! と手で混ぜ始める。すごい重量感がある。ソープランド感ある。

 

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ザバー! なんか気持ち悪い。

 

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これもうエイリアンだろ。

 

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やだあ、なんか気持ち悪い。

 

それでもこねくり回して成形しているとどんどん固まってきてスーパーボール感がでてくる。

 

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これは誰が何というおうとスーパーボールですわ。ちなみに重量が7 kgくらいある。重い。7kgのスーパーボールは完全に狂気の沙汰。

 

 

ということで、ついにキン消し入りスーパーボール(正確には綾波レイ)を作成することができました。例によって中身は見えないけど誰がなんと言おうがこれはキン消し入りスーパーボールだ。

 

子供の頃に憧れ、手が届かなかった代物を大人の財力と機動力、知識で再現する。そうすることで人生がより豊かなものになるのかもしませんね。本当に満たされた。

 

 

 

え、この7kgの綾波レイ入りスーパーボール、弾むのかって? しらねえよ、弾むんじゃねえの。なに? 落としたら割れそう? そんなことないよスーパーボールだから弾むよ。嘘じゃないよ、きっと弾む。

 

よしわかった。そこまで言うならやってみようじゃん。絶対に弾むわ。確実に弾む。心臓叩いとけ。

 

 

 

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おわり

夏恋ルンバ

なんかさあ、地域の祭りに行ったんですよ。小さな公園で盆踊りするみたいな催しで、子供会やらババアのダンスサークルとかが踊り狂っとるわけですわ。小汚いオッサンとしてはそういった”地域”的な催しに顔を出すべきでないって重々承知しているんですけれども、もうダメね、抽選会でルンバ当たるって聞いたら行くしかない。ルンバ、すごい。勝手に掃除してくれる。それでまあ意気揚々と行ったわけなんですけど、行ったら行ったで生ビールは安いわ焼きそばは安いわ焼き鳥は美味いわでまあまあ楽しくてですね、植え込みのところに座って一息ついていたんですわ。

「付き合ってほしい」

こういった地域の祭りってのは夏休みの中学生の一大イベントなわけですよ。夏休みになって好きな子に会えなくなってですね、祭りに行ったら浴衣姿のあの子がいてですね、その横にブスがいるわけですよ。

「あ、いたいた、おーい佑太ー!」

って浴衣姿のブスがトウモロコシ片手に話しかけてくるわけ。好きな子は俯いてるわけですよ。

「どうだ、浴衣だぞ、かわいいっしょ」

ってブスが鼻息も荒く言うわけ。

佑太はビックリするわけですよ、好きな子の浴衣姿を近くで見ると予想していた以上にかわいい。おまけに髪を上げている姿を初めて見た。もう胸が高鳴ってですね、まともに見れないわけですよ。

「あー、佐和子に見惚れてるんでしょ」

とかブスがガンガンくるわけ。ガンガン来るブス、ガンブス。

「わたし、焼きそば買ってくるね。ちょっと佑太、佐和子がナンパされないように横にいなさいよ」

ブスがどっかいくわけ。

へー、ブスにも良いとこあんじゃんと思いつつ見てると、二人は前々会話しないわけ。ここは男から切り出すべき場面だろ、佑太がんばれよ。

でも、悲しいくらい祭りの喧騒と小気味良い太鼓の音しか聞こえなくて、まるでここだけ時が止まったようになってるわけ。

向こうの方を見ると、ブスが焼きそばを受け取ってるところで、どうやら佑太もそれにに気が付いたみたいで、早くしないとブスが帰ってきてします。そこで佑太が言ったんですよ。

「付き合ってほしい」

物事には順序ってもんがあるだろ。いやー、もっとこう逃げ道とか塞いでからいっくべきだろ。いやー、いけませんは、これはいけませんわ。彼女なんてさらに俯いちゃってね、たぶん顔を真っ赤にしてんの。佑太も日本の国旗みたいに顔真っ赤にしてるの。

そうこうしてるうちにブス帰ってきてね、

「あー、なになにー、もしかして佑太、告白した?」

とか、こういう時だけナイフのように鋭いのな、ブス鋭いのな。

「バカ、そんなのじゃねえよ」

「ちがうよ」

とかなるわけよ。

そこでいよいよ抽選会のはじまりよ。この流れは完全にルンバが当たる流れ。回覧板で回ってきた抽選番号を握りしめたよ。番号は361番。

「さあ、次の抽選番号はー!」

とか壇上で化粧の濃いババアが言ってるわけ。

「ハァー!」

とか謎の発声で箱から番号を取り出す。

「361番!」

え、うそ、やだ。当たった。

いざ当たってみるとすごい恥ずかしい。照れくさい。こんな小汚いオッサンが馳せ参じてもいいものかと戸惑いながら壇上に上がって賞品を受け取りましたよ。

「めんつゆセット」

2等だったんですけど、1等からの落差が酷すぎやしませんか。ルンバからワンランク落ちてめんつゆセット。せめて麺がいい。めんつゆばかり30リットルくらいあんじゃねえか。一生かかっても使いきれない気がするわ。

ヒーヒー言いながら重いめんつゆセットを持って帰る帰り道、さっきの中学生がいた。

かわいい女の子が言った。

「いいよ。さっきの、いいよ」

「なになに?なに?」

ブスが戸惑う。

佑太は

「やったー」

と叫びながら、まるで踊るようにして帰っていった。ルンバでも踊るように、情熱的に帰っていった。女の子は浴衣の模様より顔を真っ赤にしていた。ブスはとうもろこし食ってた。

遠くの方で別の大きな祭りのもおのであろう、花火が見えた。華やかな光は明確な彩度で黒い空と薄い雲を焦がしていた。

僕が過ごすことはもうないであろう遠き日の夏、それを現在進行形で過ごす人がいる。あの花火のところまで行ってみたらいいのだろうか。そうしたら少しはあの日の夏に近づくだろうか。それはやめておこう、なにせめんつゆが重いのだ。

花火の光はいつまでも漆黒の夜空と、手元の漆黒のめんつゆの瓶を彩っていた。

少しだけ早いこと

少しだけ値段が安いことに気が付いてしまい、お昼休憩に職場近くのスーパーに行くことが多くなった。弁当だけでなく、一緒に買う飲み物などが安いのだ。これが毎日ともなるとなかなかバカにできない。

スーパーの入り口にはパン屋さんがあってそこを抜けると青果コーナーがある。野菜や果物を売っているが、その中央、最も目立つであろう玉座とも言える陳列棚にブドウが並べられていた。

僕の記憶が確かならば確かブドウは秋の味覚だ。それがまだ梅雨入りもしていないこの時期に大々的に売り出されている。

少しだけ思い返してみると、この玉座ともいえる陳列棚ではこの間までスイカが置かれていた。まだ寒い時期にはイチゴが置かれていたように思う。そう、この玉座は季節よりも少し早い果物が置かれる場所だったのだ。

「あ、もうブドウが出てる。最近は早いね」

「みてー高志、もうスイカ売ってるよ。夏は近いね」

そういった感覚を消費者に叩き込むべくこの玉座は存在している。

「少しだけ早い」

多くの人はこの現象が好きだ。季節よりも少しだけ早く訪れる果物はなんだか貴重な物に思えてくる。きっと人にはそういう習性があるのだろう。これは何も季節と果物だけではなくて多くの現象で垣間見ることができる。

スポーツの世界で中学生や小学生がトップレベルで顕著な成績を残す。将棋の世界で若者が偉業を達成する。大人の世界で子供が奮闘する様を多くの人が好み、熱狂する。少しだけ早い、が多くの人を惹きつけるのだ。

僕の個人的な感じ方なのかもしれないが、彼らのその偉業を「少しだけ早い」にクローズアップして取り立ててるのは少し失礼なのかもしれない。多くの場合でその彼らが成し遂げる偉業は少しだけ早くなくとも偉大で、称賛されるべきものなのだから。

連日フィーバーする「少しだけ早い」ニュースに思いを馳せ、早くなくてもそれ凄いぜと思いつつ、今日も玉座の横を通り抜けて脂っこい総菜売り場に到達する。

そこには僕と同じくらいデブな同僚がスタンバイしていて、待ちきれないとばかりにカツを物色している。

「いやー、腹が減ってね、ここのカツはすぐ売り切れるから」

「僕もお腹減って我慢できなくて」

時計は11時20分。正規の昼休憩より「少しはやい」。やはり僕らはこの「少しはやい」が大好きなのだ。