出会い系サイトには魑魅魍魎が蠢いている。
出会い系サイトと縁もゆかりもない方々はよく勘違いされているのだが、「出会い系サイトって出会えないんでしょ」「出会い系サイトってサクラばかりなんでしょ」という印象を持っている方があまりに多い。
出会い系サイトユーザーはこいつサクラなんじゃないか、業者死ねと不毛な戦争しているような印象を持たれているが、実は出会い系サイト戦争はそんなステージはとっくに終わらせて次なる戦争に移っている。そう、今の出会い系サイト戦争は「セミプロ業者との戦い」に移行しているのだ。
僕は頭のおかしい女どもと会話するのが大好きで、実際に出会ったら刺されかねないくらいの上物を相手にしているので怖くて実際に会うことはないのだけれども、ある時から突如として様子が様変わりしたのを感じていた。それもこれも、この戦争の形態が変わったことに起因する。
以前なら、こちらが何も要求しなくとも、「カレー味のうんことウンコ味のカレーどっちなら食べられる?私はシーフードカレー」と挨拶がわりに言ってくるガチものの女や、「前の彼氏が雨どいフェチで、その影響で私もホームセンターに行くと」などとこちらが金を払ってでも聞きたい身の上話をしてくる純度の高いシャブみたいな女など盛り沢山だった。サクラの中にもガチ物の魑魅魍魎が棲みついていたのだ。
けれども、ある時期を境に、そういった高純度のキチガイはいなくなり、逆にテンプレ通りの女、みたいなのが増え始めた。簡単に説明してしまうと、男が好む女のテンプレに当てはめた女、である。実はこれがセミプロ業者氾濫の確たる証拠だったのだ。
以前の出会い系サイトのサクラは、出会い系サイト側が雇った人員で、バイトのおっさんとかが魅惑的な書き込みややりとりを行っていかにユーザーにポイントを買わせるか、いかにこのサイトにいい女が溢れているかと錯誤させるためのものだった。しかし、このセミプロ型の業者は違う。ほとんどの場合が出会い系サイトの業者とは関係ないのだ。
では、何の業者かというと、デリヘル業者なのだ。これらが出会い系サイトを使って大暴れしている。改正風営法により店舗型の風俗店が壊滅し、店舗を持たない無店舗型の風俗、デリヘルが爆発的に数を増やした。そうなると、デリヘルの中で淘汰が起こり始める。大繁盛のデリヘルもあれば、全く客のこないデリヘルも誕生する。結構シビアな差異がそこに存在する。
客のこないデリヘルは何をするか。まっとうに集客する業者はごく一部である。では何をするかというと、出会い系サイトで客を募るのである。その際に、デリヘルです、誰か遊んでーと書き込みをしても誰も捕まらない。あくまでも素人を装い、ちょっとエッチな女子大生が興味本位でアクセスしてきた風を装って書き込みをしてくるのである。
関係ない人にはピンと来ないかもしれないが、出会い系ユーザーにおいて「素人」であるか「プロ」であるかは大きな問題である。素人だと思って出会い系サイトでやり取りしたら、プロが来た。これを非常に嫌う。また、基本的にそこまでしないと客のつかない不人気デリヘルなので、会ってもあまり満足できることが少ないらしい。そういった意味で、このセミプロ業者は嫌われる傾向にある。
たしかにこれには共感できて、わかりやすくいうと、ストIIをやっていたら、カップルがやってきて、僕の対面から乱入してこようとしてるんだけど「俺こんなのやったことない」「波動拳?これコマンド難しすぎない?」「なにこれ、リュウ?に似てるこいつにしようかな」と言ってて、あららー素人さんですか、ちょっと俺のコンボでトラウマ与えちゃおうかなーってワクワクしていたら、平気で瞬獄殺だしてきてボコボコにされたみたいな、そういうものですよ。うん、全然わかりやすくなかったね。
つまり、いまや出会い系サイト利用者にとって相手の女がサクラかどうかなんてチンケな戦いではなく、セミプロ業者かどうか、という高度なハイテク戦争になっているのだ。
セミプロ業者の場合、その多くがデリヘル業者の従業員が書き込みをしていて、おっさんが引っかかったら適当に暇を持て余している女の子をあてがうことが多い。女の子としてはデリヘルの客として会いに行っているのに、おっさんとしてはちょっとエッチに興味がある女子大生の初めての大冒険、みたいな感覚でいるから、そこに圧倒的バンドギャップが生じてしまう。これはもう悲劇だ。
実際に出会うおっさん達にとっては死活問題で、様々な対策が講じられているのだけど、それはまあ、機会があれば話すとして、頭のおかしい女を探している僕にとってもこれは大きな問題だ。こいつらセミプロ業者は、男が無難な会話をしてくるし、すぐ会おうとしてくるので面白くない。
「ちょっとー普段はこういうこと全然ないんですけど、友達もやってるし勇気を出して登録しちゃいました。髪はセミロングで胸はEカップ、エッチなことに興味あります。末永くお付き合いできる人を探してます」
こうメッセージを送ってくる女はまあ、セミプロ業者である。デリヘルの従業員がやっている。
「なにか変態的なこと話してよ」
僕の対応もぶっきらぼうになるもので、直球で変態話を引き出そうとする。でもセミプロ業者の対応は無難そのもので、
「わたし、実は結構変態で……たまに自分で触ったりするの……」
ふっざけんな!そんなもんが変態であるか!そんな「たまに」が変態だったら俺なんか毎日だぞ、毎日、え?お?じゃあなにか俺は変態界の上皇か、後鳥羽上皇か!もっとこう茶色い雨どいじゃないと興奮しないとか、雨どいを支える金具で拘束されたいとかそういうの送ってこいや!
「ねえ、会うなら写メおくりあいっこしようよ」
こういう申し出をしてくるセミプロ業者は少なくないです。以前のサクラでしたらネットから拾ってきた女の子の写真で誤魔化すしかなかったので、そのへんが見分けるポイントになっていたのですが、なんといってもセミプロ業者はそこに女の子がいるという強みがありますから、ガンガン画像交換に応じてきて、むしろ自分から提案してくることもあります。画像を送り合うということは会う意思がある、サクラではない、という絶好のアピールですからね。
そうして、送られてくる画像は、結構生々しい女性の写真なんですが、今度はこっちが自分の画像を送る順番になります。その時に僕は常に
を送るようにしているのですが、ある時、画像を送信する操作を間違えちゃいましてね
「おっけー、俺の写真送るね、あまり写りよくないんだけど、ごめんね」
って言いつつ、
間違えてエアマックス95(イエローグラデ)の画像送っちゃったんですね。
うわ、やべ間違えた。さすがに自分の画像送るっていって靴の画像送っちゃまずいだろって思ったんですけど、女から返ってきたコメントが衝撃だった。
「けっこうかっこいいじゃん」
いや、確かにエアマックス95はかっこいいけど、今そういうこと言ってないじゃん。これですね、セミプロ業者ってすごい数のメッセージをばら撒いてやり取りしてますから、もう、送られてきた画像なんてみてないんですよ。適当にそれっぽい返事をしてるに過ぎない。
「そうかな?あまり自信ないんだけど。ちょっと古臭くない?」
って僕も言うんです。さすがに95年に大ブームになった靴ですから、古臭さは否めない。
「そんなことないよ。わたしは結構好き」
僕も同感で、エアマックス95は好きですが、顔を送るっていってるのにエアマックス95イエローグラデを送ってきたことに対してコメントがあるべきでしょ。普通ここまで突っ込んだらちょっと画像開いてみて確認くらいするだろ。それすらしないのか。
「ちょっと別な色にしようかなーって思ってるんだけどね。色が派手すぎない?」
「そんなことないよ、わたしこの髪の色大好き」
「昔はね、けっこう狩られたりしたんだよ」
「へえー、そんなにひ弱そうには見えないけど」
こいつ、もう意地でも画像を開かないつもりだな。
そこで気がついたんですよ。セミプロ業者を避けるには、こいつら画像なんて開かないからエアマックス95(イエローグラデ)の画像を送りまくればいいって。
だからセミプロとおぼしき相手と画像をやりとりすることになったら片っ端からエアマックス95の画像を送りまくったんですね。
「そうだね、画像があったほうが安心して会えるもんね。じゃあ俺の画像送るね。ちょっと昔のやつだけど」
「けっこう好みかも。アゴのラインとか」
アゴのライン!?先っぽのあたりのことかな?
「じゃあ俺の画像おくるねー」
「けっこういいじゃん。思ったより若い」
僕も同感だね。これはデザインがすごい好き。
これは2015年に20年の時を越えて復刻されたAIR MAX 95 'GREEDY'で、当時発売していた4色を大胆にも非対称に配置したアレンジで
左足のシューズには「セーフティオレンジ」と「アクア/グレープ」の色合いをミックスし、右足のシューズには「ネオンイエロー」と「ホットレッド」のカラーを採用。象徴的なリフレクティブ(再帰反射)素材のアクセントとブラックアウトミッドソールが、汚れを目立ちにくくします。価格は¥19,440より。
とにかく、出会い系サイトではセミプロ業者を見抜くために様々な戦争が巻き起こってるのだけど、その対策は簡単だった。エアマックス95の画像を送ればいい。あいつら、ほんとに画像見ないからな。
ちなみに、最近もホットな業者に画像を送ると言って
を送ったら
「なんか勉強できそう」
ってコメントが帰ってきた。さすがに画像見てたらそれはない。頼むからちゃんと画像を開いてみてくれ。
こうして、出会い系サイトでの僕の戦争は続く。戦争とは正義と悪の戦いではない。正義と別の正義の戦いなのだ。業者側の正義と、僕の正義、激しく火花を散らしている。