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大阪駅から12駅

職場にうさんくさい電話がよくかかってくる。主に何らかの勧誘の電話なのだけど、その多くが投資用にマンションを買いませんかというものだ。どこかの街のマンションを購入し、誰かに貸して家賃収入を得る。その家賃収入からローンを返していきませんか、という提案みたいだ。

こいつらがとにかくしつこくて、全然興味がありませんといってるのに住宅ローン金利が安い今がチャンス!と連呼、それでもいらんと電話を叩き切っても、すぐにかけてきて「勝手に電話を切るとは何事ですか!?」と怒り出す始末。おまけに「ラッキーチャンスをもう一度ください!」と言い出す。C-C-Bの曲か。

本当にしつこくて、何度叩き切ってもすぐにかけてきて話し続ける。あまりのうるささに、電話線を引っこ抜いてもモジュラージャックの先からマンションーって聞こえてくるんじゃないかと思ったほどだ。

あまりにしつこくてうんざりする勧誘電話なのだけど、逆に考えるとこれほど優しい人もいない。僕はよく職場で無視されがちで、今度みんなでボウリング行きませんか?と全員に問いかける女子社員の誘いに「しょうがねーなーなんか手につけるロボットアームみたいなの持っていくよ」と言うだけど、完全に無視されて、「じゃあ皆さん参加ということで、続きはLINEで」と続きはWebで、みたいな感じで言われちゃいましてね。我が職場のLINEグループが存在していたのかよ、と震えましたよ。とにかく震えましたよ。

そうやって無視される僕にとって話を聞いてくれる人間って貴重でしてね、だって話を聞いてくれるんですよ、僕の話を聞いてくれるんですよ、こりゃあ聖人か何かの類ですよ。ですから、相手の勧誘話を押し切って延々と右手に紋章が浮かぶ選ばれた勇者が魔王を倒しに行くんだけど黒幕は勇者の親父だった笑いあり涙ありのファンタジーストーリーを数時間に渡って話しましてね、相手が切っても何回も会社に電話をかけて話し続けたことがあったんですよ。

それからというもの、その会社からは電話がかかってこなくて、僕も次回作を用意して待ってたんですけど、全然音沙汰がないんです。今度のお話は異世界転生物の意欲作で、同僚をモデルにしたお話で、ちょっと内容的に実名を出すのはまずいと思いますので伏字にさせてもらいますけど、実在する同僚Nという男が主人公です。

こいつが仕事をさぼってまでピンサロに行くピンサロ好きで、ひょんなことからピンサロに宇宙ステーション(ISS)が落ちてきて大事故になるんですね。死んだー!と思ったN川はなぜか異世界に転生していて、そこはピンサロが存在しない世界だった。ピンサロがない世界で巻き起こるピンサロファンタジー

「ピンサロでオキニのリナちゃんを指名したらリナちゃんがおしぼりもってきて「もう西川さん!来てくれなくて淋しかったんだぞう」って甘えた顔していてかわいいなあって見ていたら宇宙ステーションが落ちてきて気がついたらピンサロのない世界に転生していた件について」

っていうタイトルです。今日は皆さんにだけ特別にクライマックスをお教えすると、ピンサロ嬢のリナちゃんも実は同じ異世界に転生してます。おっとネタバレ失礼。メンゴメンゴ。

でまあ、ずっとずっと待っていて、今度は結構な大作なんで朝まで話してやるぞって意気込んでいたんですけど、全く音沙汰がなくなったんですね。いよいよピンサロファンタジーもお蔵入りかと思われたその時、別の勧誘会社から電話がかかってきたんです。

「こんにちは!PFカンパニーの鍋島と申します!本日は大変お得なお話で電話させていただきました!」

地元で大きな祭りでもあるのかってレベルですげえ元気が良くて、こうなるともう運命ですよね。PFカンパニーなんて存在しない適当な会社名なんでしょうけど、ピンサロファンタジーの頭文字と読むことだってできます。そう、これは運命。こりゃもうプロローグから話し始めるしかない。

「外回りと称して仕事をさぼりピンサロに駆け込む。もう店員は顔馴染みだ。俺の名前は辰夫。ピンサロをこよなく愛する男だ」

物語へと誘う冒頭を話し始めたんですけど、相手もなかなか剛の者らしく、構わず勧誘トークを続けるんです。

「本日は大変収益性の高いマンションのご案内です。現在関西地区の注目が高まっており」

「ピンサロがなかったら辰夫は生きていけない。辰夫は38歳にもなってそんなことばかり言っていた」

「近年では、東京に住みながら大阪のマンションを所有し、家賃収入で」

「まさかそんな、月例会議も抜け出してピンサロに行くほどの俺が、ピンサロのない世界で救世主になるなんて、この時の辰夫は思いもしなかった。ちなみに辰夫は茨城県出身だ」

「ローン金利も格安な今がチャンスです!」

ここまで噛み合わない会話があるんだろうかというレベルでお互いが好きなことを喋っているんだけど、相手の男が衝撃的なセリフを口にした。

「今日ご紹介するマンションは大変好立地です!なんと駅前ですし、大阪駅から12駅という大変便利な場所です」

大阪駅から12駅?

ピンサロファンタジーが止まった。

普通こんな言い方をするだろうか。妙にひっかかった。ハッキリ言ってしまうと12駅って結構遠い。気軽に行こうなんてあまり考えない距離だ。そもそもそれを好立地というのかも分からない。適当に相槌を打ちながら路線図を開く。大阪駅から12駅となると乗り換えも考慮するとこんな感じになる。

新今宮駅

大阪→(大阪環状線)→森之宮(5駅)
森之宮→(市営地下鉄長堀鶴見緑地線)→谷町六丁目(3駅)
谷町六丁目→(市営地下鉄谷町線)→天王寺(3駅)
天王寺→(大阪環状線)→新今宮(1駅)

こんな感じで可能な限り大阪駅から12駅を探していくと

大阪駅から12駅の可能性のある駅
向日町

道場
鳴尾
鶴橋
東鳴尾
伝法
姫島
尼崎センタープール前
尼崎
東寝屋川
今宮
動物園前駅
天下茶屋
大国町
大正
弁天町
(他にも沢山あるので見つけたら教えてネ!)

 

となる。

やつのいう大阪駅から12駅、どこなのだろうか。ええい、こんなもんじゃないはずだ。きっともっとトリッキーな魔の乗り換えトリックを使ってとんでもないところのマンションを購入させようとしているはず。

そこで閃きましたよ。ヤツの使った乗り換えトリックが。

大阪→(徒歩)→梅田(0駅※大阪と梅田は同一駅とカウント)

梅田→(阪急宝塚線)→蛍池(9駅)

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蛍池→(大阪モノレール)→大阪空港(伊丹)(1駅)

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大阪空港→JAL羽田空港(1駅)

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羽田空港→(エミレーツ航空EK0313)→ドバイ国際空港(1駅)

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これだな!
大阪駅から12駅目はドバイ!

「ですから、このビッグチャンスに是非ともマンションの購入をご検討いただき」

「ドバイだろ!」

「は…?」

「残念だったな!まさかドバイのマンションを買わせる気とはな!お見通しだぞ!」

「?????」

「偶然だったな!実は俺の新作の「ピンサロでオキニのリナちゃんを指名したらリナちゃんがおしぼりもってきて「もう西川さん!来てくれなくて淋しかったんだぞう」って甘えた顔していてかわいいなあって見ていたら宇宙ステーションが落ちてきて気がついたらピンサロのない世界に転生していた件について」略してピン転の最終舞台はドバイという構想を最初から練っていた。俺のイメージにピッタリだ。これはもう運命だ!ラストシーンはピンサロが隕石のようにドバイの街に降り注ぎ……」

「???????????」

「主人公の西川辰夫が転生したピンサロがない世界が歪み始める。そして時空のひずみからピンサロが降り注ぐドバイに帰ってくるんだ。しかし、向こうで魔女として君臨していたリナも同時に」

「……ガチャ」

「ピポパポピ、はい、すいません、ええ、担当の柏田さんお願いします。はい。マンションの件で。ええ。……てめー何勝手に電話切ってんだ。続き行くぞ、それでリナは降り注ぐピンサロに激突して正気を取り戻し、ピンサロのメテオをとめるために自らが生贄になろうとする。でもそれを西川辰夫、趣味はサイクリング、が許さない」

「……がちゃ」

「ピポパポピ、はい、すいません、ええ、担当の柏田さんお願いします。え?席を外してる?じゃあおめーでいいや。それでピンサロゲートっていうこの宇宙の全てのピンサロを司ってる神殿があるんだけど、そこにいる神がだな二人にちょっとだけ力を貸すんだ。ピンサロの神の祝福で奇跡が動き出す!」

「……ガチャ」

「あれ、でねーや。電話線抜かれたかな。朝まで話してやるつもりだったのに」

結局、僕の意欲作ピン転はお蔵入りになってしまった。こりゃあマンション購入してる場合じゃねえな。

僕はマンション勧誘の電話を待ち望んでいる。今度はほのかな泣ける恋愛ストーリーで大阪駅から12駅目の街で暮らすピンサロ嬢と男の切ないラブストーリーにするつもりだ。うん、もちろん舞台はドバイだよ。